うなり)” の例文
見ていると、獣のようにこの城のはなから悲しいうなり声を出してみたいような気になるのも同じであった。息苦しいほど妙なものに思えた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
私達が着くと間もなく、扉船とせんの上部海水注入孔のバルブが開いて、真ッ白に泡立った海水が、おそろしいうなりを立てて船渠ドックの中へ迸出ほんしゅつし始めた。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
丘陵のような山脈の遠くから激しく移動する灰色の雲と一緒に、湿気をもったらッ風が轟々ごうごううなりをあげて襲ってくるのだった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
赤彦君はまれに歯ぎしりをし、うなつた。そのうなりが十ばかり続くと、息が段々幽かになつて行つた。そして消えるやうになるかとおもふと、また唸がつづいた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
続いて、幾十、幾百の悪獣は、圧迫的な、いやらしいうなりの合唱を挙げて、四方から、恐ろしい力で圧倒します。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
すさまじいむしうなりやがつてかへしたひだり熊蜂くまばちが七ツ八ツ、ばたきをするのがある、あしふるふのがある、なかにはつかんだゆびまた這出はひだしてるのがあツた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
唱歌の長が弓を當てて胡弓のうなりめしてみると、樂器は忽ち哄笑たかわらひ顫音ふるへごゑのおどけた鳴動をして答へた。伊太利亞狂言がよく消化こなれずに腹の中にあるのだらう。
胡弓 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
そんなことを考えていたとき、夜の静けさをついて空の一角から、ぶーンとにぶいうなりが聞えてきた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雉の声がやっと通じたのか、来宮様はううと云うようなうなり声を出した。雉は此処ここぞと思って
火傷した神様 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と惣兵衛ちやんが得意になつて、うしろに着いてゐるうなりを見せた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
あな、あかき血浴びしごとも啼き狂ひ絶望ぜつまううなりはしる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蜜を漁る蜂のうなり。藪で啼いているうぐいすの声。
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
マリバスが笑つたり、泣いたりすると、やれヸオロンの三筋の絲を弓でくやうなうなりが聞える。
サバトの門立 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
午後九時になると、とうとう非常管制がかれた。サイレンのうなり、ラジオの拡声器から流れてくるアナウンサーの声。「空襲、空襲!」と叫びながら走ってゆく防護団の少年。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
可恐おそろしいうなりじゃな。」とつぶやいて、一間口けんぐちへだての障子の中へ、腰を曲げて天窓あたまから入ると
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それからうなりいとの結び目に、ちよつちよつよ触つた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
戦慄わななきの、かなしみのうなりあげつつ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つかつかと行くと、すさまじい虫のうなり、やがて取って返した左の手に熊蜂が七ツ八ツ、羽ばたきをするのがある、あしを振うのがある、中には掴んだ指のまた這出はいだしているのがあった。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小蒸汽船こじようきせんはひばめるにぶうなり
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しっ、」と押えながら、島野紳士のセル地の洋服のひじを取って、——奥を明け広げた夏座敷の灯が漏れて、軒端のきばには何の虫か一個ひとつうなりを立ててはたと打着ぶつかってはまた羽音を響かす
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くるほしきヸオラのうなり……
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と一喝、虎のごときうなりをなして、ステッキをひしと握って
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鬱憂うついううなり重げに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)