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口實
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こうじつ
彼は
此手紙に
切手を
貼つて、ポストに
入れなければならない
口實を
求めて、
早速山を
下つた。さうして
父母未生以前と、
御米と、
安井に、
脅かされながら、
村の
中をうろついて
歸つた。
又金絲雀は
顫へ
聲で、『お
歸りよ、
皆な!もう
寢る
時分ぢやないか!』と
其子供等を
呼びました。
種々の
口實を
設けて、
皆な
殘らず
立去つた
後には、
唯た
愛ちやん
一人になつて
了ひました。
實はなくなりました
父が、
其の
危篤の
時、
東京から
歸りますのに、(タダイマココマデキマシタ)と
此の
町から
發信した……
偶とそれを
口實に——
時間は
遲くはありませんが、
目口もあかない
彼は
書生として
京都にゐる
時分、
種々の
口實の
下に、
父から
臨時隨意に
多額の
學資を
請求して、
勝手次第に
消費した
昔をよく
思ひ
出して、
今の
身分と
比較しつゝ、
頻りに
因果の
束縛を
恐れた。