十度とたび)” の例文
あぶないてば木綿ちゃん、という呼び声はこの会食中にばかりも十度とたびも繰り返された。あぶないとは何の事か木綿ちゃんの知った事ではない。
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
十度とたびほど、大地をなぐると、槍は折れてしまった。武蔵は、納屋のひさしの下にあった漬物だるの押し石をさしあげて、取りかこむ群れへほうりつけた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫様ひいさま、それ/\、ほしひとつで、うめぢや。またゝきするに、十度とたびる。はやく、もし、それ勝負しようぶけさつせえまし。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その妻は見るもいとはしき夫のそばに在る苦を片時も軽くせんとて、彼のしげ外出そとで見赦みゆるして、十度とたび一度ひとたびも色をさざるを風引かぜひかぬやうに召しませ猪牙ちよきとやらの難有ありがたき賢女の志ともいただき喜びて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
し其の身に附いてゝも其の子の代には屹度消える訳のもので、火事盗難という物が有るから、どんなでか身上しんしょうでも続いて十度とたびも火難に出逢い、たてたんびに蔵までも焼いたら堪るものじゃなかろう
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女房 お国でたとえはむずかしい。……おお、五十三次と承ります、東海道を十度とたびずつ、三百度、往還ゆきかえりを繰返して、三千度いたしますほどでございましょう。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それさえ気味が悪いのに、十度とたびばかりさすっておいて、円髷まるまげを何と、わかい女の耳許からくぐらして、あの鼻筋の通った、愛嬌あいきょうのない細面ほそおもてしまった口で、そのあざを、チュッと吸う
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十度とたび、これをあらひたるものは、うまれし 清秀せいしうにしてたつとし。あらふこと二三度にさんどなるものは、尋常じんじやう中位ちうゐひと、まるきり洗濯せんたくをしないのは、昏愚こんぐ穢濁あいだくにして、しか淫亂いんらんだ、とをしへたのである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちつたか鼻柱はなばしらから手足てあしさきまでみがくことあらふこと、一日いちにち十度とたびおよぶ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)