冷水ひやみづ)” の例文
第六 毎日まいにち一度いちど冷水ひやみづあるひ微温湯ぬるゆにて身體からだ清潔きれいぬぐひとり、肌着はだぎ着替きかへべし。入浴ふろは六七日目にちめごとなるたけあつからざるるべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
老畸人も亦たむかしの豪遊の夢をや繰り返しけむ、くさめ一つして起きあがりたれば、冷水ひやみづのんど湿るほし、眺めあかぬ玄境にいとま乞して山を降れり。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ところが、この秋の出水でみづで、四辺あたり幾度いくたびか水にひたされてゐるのに、この冷水ひやみづの湧く田圃たんぼだけは、植付けられた稲のまゝ、ふはりと水の上に浮き上つてゐる。
七月朔日ついたち四更に発す。冷水ひやみづ峠を越るに風雨甚し。轎中唯脚夫のつゑを石道に鳴すを聞のみ。夜明て雨やむ。顧望こばうするに木曾の碓冰うすひにも劣らぬ山形なり。六里山家やまが駅。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
飛石の足音は背より冷水ひやみづをかけられるがごとく、顧みねどもその人と思ふに、わなわなとふるへて顔の色も変るべく、後向きに成りてなほも鼻緒に心を尽すと見せながら
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
猛惡まうあくなるさる本性ほんしやうとして、容易ようゐさない、あだかあざけごとく、いかるがごとく、その黄色きいろあらはして、一聲いつせいたかうなつたときは、覺悟かくごまへとはいひながら、わたくしあたまから冷水ひやみづびたやう戰慄せんりつした
退社といふことばが我ながらムカムカしてる胸に冷水ひやみづを浴せた様に心に響いた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
宛然さながら襟下えりもとから冷水ひやみづびせられたやうにかんじた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ことさま/″\にうもへられぬおもひのありしに、飛石とびいし足音あしおとより冷水ひやみづをかけられるがごとく、かへりみねども其人そのひとおもふに、わな/\とふるへてかほいろかわるべく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お蔭でマツキンレイは冷水ひやみづを浴びせかけられたやうにすくむでしまつた。あの大きな図体の男が……。