内外うちと)” の例文
鉦叩かねたたき——湖の宿の訪客。秋のしよぼふる雨のなかで、垣の内外うちとで、いつまで、たち去らない巡礼。鉦叩くだけで、御詠歌はやらない。
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
天狗てんぐまないたといひますやうな 大木たいぼくつたのが据置すゑおいてあるんです。うへへ、わたし内外うちときぬられて、そしてかされました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのずるそうな眼とさかしげな耳とを絶えず働かせて、内外うちとのことを何かにつけて探り出そうとしている、古狐のようなこの女房が
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
寺の浄域が、奈良の内外うちとにも、幾つとあって、横佩墻内よこはきかきつと讃えられている屋敷よりも、もっと広大なものだ、と聞いて居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
もちひて浮々うき/\とせし樣子やうすさてまこと悔悟くわいごして其心そのこゝろにもなりぬるかと落附おちつくは運平うんぺいのみならず内外うちとのものもおなじことすこまくら
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「どのような事が起るかわかりませぬ。見苦しい事の無いように、これからすぐに家の内外うちと綺麗きれいに掃除いたしましょう。」と鞠は素早くたすきをかけた。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
内外うちとにも満ち溢るれば、ここ過ぐと人は仰ぎ見、道行くと人はかへりみ、むらぎもの心もしぬに、踏む足のたどきも知らず、草まくら、旅のありきのたまたまや、我も見ほけて
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
神風や玉串の葉をとりかさし内外うちとの宮に君をこそ祈れ (俊惠)
歌よみに与ふる書 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
新しき御代の光は国の内外うちとに。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
四目垣よつめがき内外うちとの菊の乱れかな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
武家が跋扈ばっこの時代であるから、陪臣またものの師直の娘も内外うちとの者に姫と呼ばれて、かれは栄耀のあるたけを尽くしていた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
旦那や御新造に宜くお礼を申て来いとととさんが言ひましたと、子細を知らねば喜び顔つらや、まづまづ待つて下され、少し用もあればときて内外うちとを見廻せば
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
内外うちとにも満ち溢るれば、ここ過ぐと人は仰ぎ見、道行くと人はかへりみ、むらぎもの心もしぬに、踏む足のたどきも知らず、草まくら、旅のありきのたまたまや、我も見ほけて
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
神風や玉串たまぐしの葉をとりかざし内外うちとの宮に君をこそ祈れ (俊恵しゅんえ
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
国の内外うちとの人の愛。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まことに実体じっていな忠義者で、主人の子どもを大切に致してくれますので、内外うちとの評判も宜しゅうございます
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
旦那だんな御新造ごしんぞくおれいを申ていととゝさんがひましたと、子細しさいらねばよろこかほつらや、まづ/\つてくだされ、すこようもあればときて内外うちと見廻みまはせば
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
神風や玉串の葉をとりかざし内外うちとの宮に君をこそ祈れ
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここのかど庇に繁き雑草あらくさ内外うちとの暑さなほち難し
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わっしも、そこへ見当をつけて、女中のお嶋という奴をだましていたのですが、この女中は三月の出代りから住み込んだ新参で、内外うちとの事をあんまり詳しくは知らねえらしいのです。
約束の物は貰つて行かれますか、旦那や御新造に宜くお禮を申して來いと父さんが言ひましたと、子細を知らねば喜び顏つらや、まづ/\待つて下され、少し用もあればと馳せ行きて内外うちとを見廻せば
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
角楼は石階いしきだせまわきのぼる高壁たかかべ内外うちと雪こごり積む
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お八重という女房が内外うちとのことを一人で切って廻している、いわば嚊天下かかあでんかの家だそうで、もう年頃の息子や娘がありながら、お八重は派手なこしらえで神詣りにもたびたび出て歩くという評判です
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)