其度そのたび)” の例文
同僚などからほとんど毎日の如く冷笑される、何時いつ結婚式を挙げるなど揶揄からかはれる其度そのたびに、私は穴にも入りたい様に感じまするので
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
時々とき/″\さむかぜて、うしろから小六ころく坊主頭ばうずあたまえりあたりおそつた。其度そのたびかれさらしのえんから六でふなかみたくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれまはりを掃除さうぢするニキタは、其度そのたびれい鐵拳てつけんふるつては、ちからかぎかれつのであるが、にぶ動物どうぶつは、をもてず、うごきをもせず、いろにもなんかんじをもあらはさぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其度そのたびに気が附いて自分は次第に発狂するのでは無いかと思ふとおそろしさに身をふるはさずには居られない。良人をつとあるひは叱つたりあるひすかしたりして自分の気鬱症きうつしやうを紛らさせやうとつとめて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すると、芳ちゃんは屹度きつと怒つた樣な顏をして見せるが、此時は此女の心の中で一番嬉しい時なので、又、其顏の一番滑稽おどけて見える時なのだ。が、私は直ぐ揶揄からかふのが厭になつて了ふので、其度そのたび
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
御米およねにするやうまくら位置ゐちうごかした。さうして其度そのたびに、したにしてゐるはうかたほねを、蒲團ふとんうへすべらした。仕舞しまひには腹這はらばひになつたまゝ兩肱りやうひぢいて、しばらくをつとはうながめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
真赤まかんだのも稀にまじつて居て其度そのたびに日本の秋を想はせた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
『あゝ、行くさ。』と、其度そのたび渠は恁麽こんな返事をしてゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)