兵兒帶へこおび)” の例文
新字:兵児帯
御蔭おかげられた品物しなものまたもどりましたよ」とひながら、白縮緬しろちりめん兵兒帶へこおびけた金鎖きんぐさりはづして、兩葢りやうぶた金時計きんどけいしてせた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「さあ、りもん着更へて。……」と早口をして、白メリンスの兵兒帶へこおびに手をかけると、追ひ剥ぎのやうに竹丸のヨソイキの着物を脱がしかけた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
……あらためてふまでもないが、車賃くるまちんなしの兵兒帶へこおびでも、つじちまたさかまをすまでもないこと待俥まちぐるまの、旦那だんな御都合ごつがふで、を切拔きりぬけるのが、てくの大苦勞だいくらうで。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もう其話そのはなしはめ/\といひながらたちあがるときおもてとほ兵兒帶へこおびの一むれ、これ石川いしかはさん村岡むらおかさんおりきみせをおわすれなされたかとべば、いや相變あひかはらず豪傑ごうけつこゑかゝり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いや、どうもお世話樣になりやした!」と、朴訥ぼくとつな挨拶を背後に投げて、男は溜息をつきながら自分の兵兒帶へこおびを解きにかかつた。さうして浮腫むくみのあるやうな青ぶくれた赤兒の死骸をその肌に抱いた。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
兩手を細い兵兒帶へこおびに突込んだまゝ、のそ/\傍へやつて來た。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
粗末な飛白かすりの着物に白い兵兒帶へこおびをだらしなく結んで、「るか」と太い聲をして來たことのあるのを思ひ出してゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なにかんがへてらつしやるの」といた。宗助そうすけ兩手りやうて兵兒帶へこおびあひだはさんで、心持こゝろもちかたたかくしたなり
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
やがて、紺絣こんがすり兵兒帶へこおびといふ、うへ旅窶たびやつれのしたすぼらしいのが、おづ/\とそれた。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分の幅の廣い白縮緬の兵兒帶へこおびに毒々しく絡んでゐる太い金鎖の色と比べなぞした。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
とき着物きものいで、寐卷ねまきうへに、しぼりの兵兒帶へこおびをぐる/\きつけながら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)