先手せんて)” の例文
「どうぞ先手せんての端にお加え下さい。そして父に代って、父にまさるてがらを立てなければ、父も九泉の下で浮かばれまいと思われます」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先刻さっきから、おしょうさんが、なんでったろうかとおもったのが、ほぼさっせられると、地主じぬしは、先手せんてつつもりで
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、きょうは、おまえが先手せんて(先にこまをうごかす)だ。このまえ、わしに二度も負けているんだからね。」
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
半助 じゃあるめえよ、俺達の方が先手せんてになったのだ。どうせこの宿に入って来るのだ。まあいいや。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
その身体からだ桐油とうゆ合羽かっぱでキリリと包んでいるし、質素な竹の笠をかぶり、尋常な足ごしらえをしているものですから、お銀様に先手せんての打てようはずがありませんでした。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
よめ先手せんてゆ。いはく、ひがしの五からはじめてみなみの九のいしと、しうと言下げんかおうじて、ひがしの五とみなみの十二と、やゝありてよめこゑ西にしの八ツからみなみの十へ、しうといさゝか猶豫ためらはず、西にしの九とみなみの十へ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たかが青侍の腕だてと思い侮っていた先手せんての何人かも、算を乱しながら、そびらを見せる——中でも、臆病おくびょう猪熊いのくまおじは、たれよりも先に逃げかかったが、どうした拍子か、方角を誤って
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三左衛門と僧は夕方まで石を持っていたが、一勝一敗、先手せんてになる者が勝ち後手ごてになる者が負けて、はなはだしい懸隔けんかくがなかったので非常に面白かった。碁が終って僧が帰ろうとすると三左衛門が云った。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おれは、おれの魂に、ただ気まぐれから泥を塗ろうとするやつ、そう言うやつらの先手せんてを打つんだ。不孝な子、邪慳じゃけんな夫、薄情な兄弟、それから何、それから何、それがおれの魂だ。まあ聴け……。
じゃあ俺の方が先手せんてに廻ったか、そうだとすると占めたもんだ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「吉川君に先手せんてを打たれてしまった」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「畜生、先手せんてを打ちやあがつたな。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
書写山のかこみを破って、十七日、師直、師泰の兵を先手せんてに、兵庫へ出、さらに御影みかげ街道へと、いかりの奔流を見せていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半助 じゃあるめえよ、俺達の方が先手せんてになったのだ。どうせこの宿に入って来るのだ。まあいいや。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
ればことよ。今度こんど大災害だいさいがいにつけては、さきんじて見舞みまはねばならない、のこりのいへ無事ぶじはうあとになつて——類燒るゐせうをされた、なんともまをしやうのないかたたちから、先手せんてつて見舞みまはれる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のみならず時々は先手せんてを打ってKの鋒先ほこさきくじきなどした。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その政長の軍は、吉良満貞を討って海道へ伸び、佐夜さよ中山なかやまでもまた、直義の先手せんて上杉憲顕のりあきを打ち破った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊那丸いなまるじしんが先手せんてとなり、小幡民部こばたみんぶ軍師ぐんしとなって、もうすぐここへ攻めよせてくるけはい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻女山へ奇襲攻撃隊を向けていることといい、ここに陣取って、それに依る敵の崩れを待ちぶせている要撃陣といい、すべて先手せんてを取ってさしている将棋として局面をていたのである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほとんど神さま、このおかたに会ってはかなわないから、三どめの大目玉をいただかないうちに、なんでもかでも、こっちからあやまってしまうほうが先手せんてだと、そこは竹童もなかなかずるい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ま、おれが先手せんてに斬って仆すから、しばらく形勢を眺めていてくれ」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)