俚諺ことわざ)” の例文
温泉うんぜんはちまき、多良頭巾たらづきん」といふこと、これをその国のある地方にて聴く、専ら雲のありさまを示せるもの、おもしろき俚諺ことわざならずや。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
それからまた一転して、今度は素子と俚諺ことわざの話がはじまった。その話では素子が感興を面に浮べ、帳面をひろげて書きこんだりしている。
広場 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あめりか当代人気作家ジョウジ・エイドの作風にしたがえば、ここにはどうしても彼のいわゆる俚諺ことわざなるものが必要だ。曰く。
字で書いた漫画 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
その本の中に「貧乏は瑕瑾きずではない。」という俚諺ことわざを見出して云うことには、「わたしね、それを読んで、おじさんのことを聯想したわ。」
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
すゝめもなさずるものは日々ひゞうとしの俚諺ことわざもありをだにれば芳之助よしのすけ追慕つゐぼねんうすらぐは必定ひつぢやうなるべしこゝろながくとき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ポェ・チーコル・チュスン即ちチベットの戸数は十三万戸であるという事が俚諺ことわざのようにいわれて居ますが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
心無しを使うなと俚諺ことわざにもいう十月の中十日なかのとうかの短い日はあわただしく暮れて、七兵衛がお兼ばあやの給仕で夕飯をくってしまった頃には、表はすっかり暗くなった。
半七捕物帳:18 槍突き (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
思ふ事貴賤きせん上下の差別さべつはなきものにて俚諺ことわざにも燒野やけの雉子きゞすよるつるといひて鳥類てうるゐさへ親子の恩愛おんあいにはかはりなしかたじけなくも將軍家には天一坊はじつの御愛息あいそく思召おぼしめさばこそかく御心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これ年頃としごろになったのでございますから、縁談えんだんくち諸方しょほうからあめるようにかかりましたが、俚諺ことわざにもおびみじかしたすきながしとやら、なかなかおもつぼにはまったのがないのでございました。
「ペネロピーの仕事」という英語の俚諺ことわざが何遍となく彼の口にのぼった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
了ぬ、俚諺ことわざにも鉄のさめぬうちに打てと云う事が有る
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
俚諺ことわざとみを取て目を廻し身代に苦みし者漸々やう/\金のつる有付ありつきヤレ/\嬉しやと思ひ病氣付事あり是心のゆるみより出るとかや茲に畏くも 人皇百九代 後水尾ごみづのを天皇には至て和歌を好ませられ後々のち/\三十六歌仙かせん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
生涯しやうがいはぢとなす程の事でもなし古き俚諺ことわざ後難こうなんは山にあらず川にあらず人間反覆のうちありいふいつ何時なんどき如何なる難儀憂目うきめ出會であふも計られず然れど又々また/\うんひらく事もあるものなり何でも心も正直しやうぢきにして大橋殿の恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)