仁義じんぎ)” の例文
たとえば仁義じんぎのために死するとか、国家の責任を双肩そうけんになって立つとか、邦家ほうかのためには一身をかえりみず、知遇ちぐうのためにはいのちおとすとか
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
博徒等集まり、投げつけられたる生涯の機因チヤンスの上で、虚數の情熱を賭け合つてゐる。みな兇暴のつらだましひ仁義じんぎを構へ、虎のやうな空洞に居る。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
さめ仁義じんぎをもつてたみ百姓ひやくしやうをしたがへ道におちたるをひろはず戸さゝぬ御代とせんとなりまことにしゆんといへども聖人せいじんの御代には庭上ていじやうつゞみを出しおき舜帝しゆんていみつから其罪そのつみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
豊臣太閤に至って前代未聞ぜんだいみもんの盛事。それもはや浪花なにわの夢と消えて、世は徳川に至りて流れも長く治まる。剛強必ず死して仁義じんぎ王たりという本文をのあたりに見るようじゃ
ひょんな破目はめで、敵味方になったといってあんまりつらく当るのも、泥棒仲間の、仁義じんぎ道徳にかけるというもんだ——あれだって、茶碗ざけの一杯も、たまにはやりたいだろう。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
その小乗の教は一切の事皆式に依りて行へとなり。孔子の道も孝悌こうてい仁義じんぎより初めて諸礼法は仏家の小乗なり。その一以貫之いつもってこれをつらぬくは此教を一にして執中しっちゅうに至り初て仏家大乗の一場いちじょうに至る。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「何處かの小僧ですよ。——錢形の親分さんは御在宅で御座いませうか——つて、大玄關で仁義じんぎを切つてますよ、バクチ打と間違へたんだね。水でもつかけて、追ひ返しませうか」
天願氏は泥竜館に七八年も居るので、主のような気がするから一応仁義じんぎをつくして置かねばならぬのだろう。向う側で、盃の男が天願氏に頭を下げた。おばさんが酒をつぎながら言った。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「……たとい電車の中の掏摸すりといえども、乗客から蟇口がまぐちりとったときは、その代償として相手のポケットへチョコレート等をねじこんでおくべきだ。そういう仁義じんぎに欠ける者は、猫畜生に劣る」
そのばんゆめ奇麗きれいなことは、黄やみどりの火が空でえたり、野原のはら一面いちめん黄金きんの草にかわったり、たくさんの小さな風車がはちのようにかすかにうなって空中をんであるいたり、仁義じんぎをそなえたわし大臣だいじん
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かんがへ給ふ處におよそ奉行たる者は正路しやうろにあらざれば片時へんじ立難たちがた其正直そのしやうぢきにて仁義じんぎのもの當世たうせいに少し然るに大岡越前守伊勢山田奉行ぶぎやうとして先年の境論さかひろんありし時いづれの奉行も我武威わがぶゐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かんじけるまことに正直しやうぢき理非りひまつたふして糸筋いとすぢの別れたるが如くなりしとかや其後正徳しやうとく六年四月晦日みそか將軍家繼公しやうぐんいへつぐこう御多界ごたかいまし/\すなはち有章院殿と號し奉る御繼子けいしなく是によつて御三家より御養子ごやうしなり東照宮とうせうぐうに御血脉けつみやくちかきによつて御三家の内にても尾州公びしうこう紀州公きしうこう御兩家御帶座ごたいざにて則ち紀州公上座じやうざなほり給ふ此君仁義じんぎ兼徳けんとくにまし/\吉宗公よしむねこうと申將軍しやうぐんとなり給ふ其後そのご諸侯しよこうの心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)