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乍
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たちま
ふりがな文庫
“
乍
(
たちま
)” の例文
彼が新年の賀状を兄に送るや、
乍
(
たちま
)
ちその本色を顕わして曰く、「
一度
(
ひとたび
)
血を見申さざる内は、
所詮
(
しょせん
)
忠義の人も
著
(
あらわ
)
れ申さぬかと存じ奉り候」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
乍
(
たちま
)
ちはたはたと
跫音
(
あしおと
)
長く廊下に
曳
(
ひ
)
いて、先のにはあらぬ
小婢
(
こをんな
)
の
夕餉
(
ゆふげ
)
を運び
来
(
きた
)
れるに引添ひて、
其処
(
そこ
)
に出でたる宿の
主
(
あるじ
)
は
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
乍
(
たちま
)
ち得たるが如くにして又乍ち失ひ、恍として身躬から其身の在る處を忘れ、一心不亂、耳目鼻口の官能も殆んど中止の姿を呈したる其最中に、突然家計鹽噌の急に促され
人生の楽事
(旧字旧仮名)
/
福沢諭吉
(著)
千歳の松も限りあればや昔の縁
乍
(
たちま
)
ち消えうせて木も枝もやけこがれさも物うげに立てるあはひに本堂のみ屹然として聊かも傷はざるは浪花堀江の御難をも逃れ給ひし御仏の力
かけはしの記
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
われらはまだ
煖
(
ぬく
)
まらぬ
臥床
(
ふしど
)
を降りて、まどの
下
(
もと
)
なる小机にいむかひ、
烟草
(
タバコ
)
燻
(
くゆ
)
らすほどに、さきの笛の音、また窓の外におこりて、
乍
(
たちま
)
ち断えたちまち続き、ひな
鶯
(
うぐいす
)
のこころみに鳴く如し。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
己
(
おのれ
)
の妹に仕立てたる武智の姫君
皐月
(
さつき
)
を人質にとられしため力及ばず「武智の姫は
汝
(
なんじ
)
の娘のつもりにて尼になす」と云ふ淀の方の言葉をきき「思ひおく事更になし」と、
乍
(
たちま
)
ち覚悟して自殺す。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
あらせいとうの間には、露けき橄欖の葉を織り込めつ。高き青空と深き碧水とは、
乍
(
たちま
)
ち草木に遮られ、乍ち又一樣なる限なき色に現れ出づ。我がためには、物としてめでたく、珍らかならざるなし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
灯前影ヲ
吊
(
とぶろ
)
フテ
彷徨彳亍
(
ほうこうてきちょく
)
タリ。
忽
(
たちま
)
チ声ノ中空ヨリ落ルモノアルヲ聞キ、窓ヲ推シテコレヲ
視
(
み
)
ルニ、天
陰
(
くも
)
リ月黒ク、
鴻雁
(
こうがん
)
嘹喨
(
りょうりょう
)
トシテ
乍
(
たちま
)
チ遠ク乍チ近シ。
窃
(
ひそか
)
ニ自ラ嘆ズラク、ワガ兄弟三人幸ニシテ故ナシ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
銀缾
(
ぎんぺい
)
乍
(
たちま
)
ち破れて
水漿
(
すゐしやう
)
迸
(
ほとばし
)
り
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の全体は燃質にして組織せられたり、火気に接すれば
乍
(
たちま
)
ち熖となる、その熖となるや鉄も
鎔
(
とか
)
すなり、金も鎔すなり、石も鎔すなり、
瓦
(
かわら
)
も鎔すなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
乍
(
たちま
)
ち有りて、
迸
(
ほとばし
)
れるやうにその声はつと高く揚れり。貫一は
愕然
(
がくぜん
)
として枕を
欹
(
そばだ
)
てつ。女は
遽
(
にはか
)
に
泣出
(
なきいだ
)
せるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その理を案じその
働
(
はたらき
)
を察し、
乍
(
たちま
)
ち得たるが如くにして又乍ち失い、恍として
身
(
み
)
躬
(
みず
)
からその身の在る処を忘れ、一心不乱、
耳目鼻口
(
じもくびこう
)
の官能も
殆
(
ほと
)
んど中止の姿を呈したるその最中に
人生の楽事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
四階の屋根裏には、エリスはまだ
寢
(
い
)
ねずと覺ぼしく、
烱然
(
けいぜん
)
たる一星の火、暗き空にすかせば、明かに見ゆるが、降りしきる鷺の如き雪片に、
乍
(
たちま
)
ち掩はれ、乍ちまた顯れて、風に弄ばるゝに似たり。
舞姫
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ルーテルの幼きや、胡弓を人の
門口
(
かどぐち
)
に弾じて以て
自
(
みずか
)
ら給す、弾じ終りて家人の物を与えんとするや、彼れ
乍
(
たちま
)
ち赤面して
遁
(
のが
)
れ去れり。彼
何
(
な
)
んぞかくの如く小心なる。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
凄
(
すさまじ
)
き谷川の響に紛れつつ、
小歇
(
をやみ
)
もせざる雨の音の中に、かの
病憊
(
やみつか
)
れたるやうの柱時計は、息も
絶気
(
たゆげ
)
に半夜を告げわたる時、
両箇
(
ふたり
)
が
閨
(
ねや
)
の
燈
(
ともし
)
は
乍
(
たちま
)
ち
明
(
あきら
)
かに
耀
(
かがや
)
けるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
四階の屋根裏には、エリスはまだ
寝
(
い
)
ねずと
覚
(
お
)
ぼしく、
烱然
(
けいぜん
)
たる一星の火、暗き空にすかせば、明かに見ゆるが、降りしきる鷺の如き雪片に、
乍
(
たちま
)
ち掩はれ、乍ちまた顕れて、風に
弄
(
もてあそ
)
ばるゝに似たり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
乍
漢検準1級
部首:⼃
5画
“乍”を含む語句
然乍
乍憚
乍然
乍浦
乍併
蔭乍
他所乍
乍恐
乍序
乍去
乍失敬
居乍
仕乍
見乍
餘所乍
朧乍
為乍
涙乍
朧気乍
泣乍
...