不慮ふりょ)” の例文
万が一にも、赤穂の浪人共のために、不慮ふりょやいばでもむくわれたなら、左兵衛佐さひょうえのすけは、何うなりましょうか。吉良家は、安泰に続きましょうか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親方はまた吉治が不慮ふりょ怪我けがで入院したことから、その代りに女房の従弟の正木正太を連れて来たが、この人物は保証するというようなことを
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不慮ふりょの死の二十分前に、無意識に犯人の顔を、パッカアという一人の人間に見せたという重要な役目を果したのだが
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ふたたび家を東京にうつすに及び、先生ただちにまげられ、いわるるよう、鄙意ひい、君が何事か不慮ふりょさいあらん時には、一臂いっぴの力を出し扶助ふじょせんと思いりしが
芳三のような男にとってはとろくさい仕事であったが、それでも無難に勤めていたのである。夫婦の間にはトシという娘があった。その不慮ふりょの死の際、芳三は三十二であった。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
ひめをばかり墓所はかしょより、きたりてすくされよ、とロミオかたまうりしに、使僧しそうヂョンとまうもの不慮ふりょことにて抑留ひきとめられ、夜前やぜんそのしょ持歸もちかへってござりまするゆゑ、目覺めざめなばさぞ當惑たうわく
大岡様へ申しあげる前に伊兵衛は不慮ふりょのやいばにたおれたのに、忠相はいかにしてお艶のその後の消息を詳知しょうちしているのか? 泰軒に頼まれた大事な人妻お艶である女ひとりの動き
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その不完全な工事のめに、高い崖の上にかよっている線路がはずれたり、深い谿谷たにの間にかかっている鉄橋が落ちたりして、めに、多くの人々が、不慮ふりょの災難に、非命ひめいの死をげた事が
大叫喚 (新字新仮名) / 岩村透(著)
しかし弔辞の処女作には多少の興味を持っていたから、「悠々たるかな、白雲はくうん」などと唐宋八家文とうそうはっかぶんじみた文章をそうした。その次のは不慮ふりょ溺死できしを遂げた木村大尉きむらたいいのために書いたものだった。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不慮ふりょ椿事ちんじ出来しゅったいいたし、勅使をお迎え申し奉る大礼に、何かの御不審もござりましょうが、平にお見のがしの程を』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近頃この鬼仏洞を見物する連中がえ、評判が高くなってきたのはいいとして、先頃以来この洞内どうないで、不慮ふりょの奇怪な人死ひとじにがちょいちょいあったという妙な噂もあるので
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
完全で、正確この上なしの頭脳を持っている筈の鬼村博士はまことにつまらない、錯覚さっかくのために不慮ふりょの最後をげた。国際殺人団全体にその飛報が伝わると団員一同は色を失った。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こよい、相伝そうでんあるじ忠盛どののお身に、不慮ふりょあらんやの取りざたをうけたまわり、かくはさむろうてまかりおりまする。いのちをかけて推参の者。出よとて、めったにここは動く者でございません
「武門の嫁入りだ。どんな変がないとも限らぬ。あっては聟殿に申しわけあるまいが。……父親の心添えだ。総領のそちは、婚儀の席に連なるより、陰にあって、不慮ふりょの出来事に備えておれ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この不慮ふりょの密航者をどうするかについて、艇では大議論が起った。もう地球から十二万キロも離れては、彼を落下傘パラシュートで下ろすわけにも行かなかった。そんなことをすれば死んでしまうに決っている。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)