下手人げしゅにん)” の例文
じゃ下手人げしゅにんではなかったのですね。でも、同類でないとはめられませんよ。彼等は実に符節を合わすように似ているんですからね。
「なんにもない。よしんば少しばかりの紛失物があったにしても、それより倅を殺した下手人げしゅにんを挙げるのが先じゃあるまいか、親分」
みぎ兇状きょうじょうの女スリ上方すじへ立廻りたる形跡これあり似より下手人げしゅにん召捕りのせつは人相書照合一応江戸南町奉行まで示達じたつあるべきもの。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お絹と六三郎と熊の毛との関係はこれで判ったが、お絹を殺した下手人げしゅにんは判らなかった。六三郎はまったく知らないと云い切った。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
乳母ばあやは今日の夕刊を見たろう? 事件ことがどうも面白くないんだ。ボーシュレーは書記を殺した下手人げしゅにんがジルベールだと云い張っている。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
僕は二人の下手人げしゅにんを見た。そして、それがあの博物館にあつた赤膚媛、牙氏月姫といふ二体のミイラに他ならぬことを認めた。
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
そこへ、刃傷も刃傷、一役人の首が文字どおり飛んだのである。しかも、下手人げしゅにんらしく思われる者は、その場から逐電ちくでんして影も形も見せない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なんら後悔の情は起こさなかったが、「おまえがこの老夫人の下手人げしゅにんだぞ」という良心の声を、彼はどうしてもおさえつけることが出来なかった。
まちではもういたところ、この死骸しがいのことと、下手人げしゅにんうわさばかり、イワン、デミトリチは自分じぶんころしたとおもわれはせぬかと、またしてもではなく
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
乳母 チッバルトどのはおにゃって、ロミオどのは追放つゐはうぢゃ。下手人げしゅにんのロミオどのは追放つゐはうにならッしゃったのぢゃ。
小「まア林藏待て、下手人げしゅにんは友之助と決ってるから追って又取調べるであろう、何しろ三四さんしの番屋へ送って置け」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そう云わっしゃるなら、わたしがお岩さまを殺した下手人げしゅにんになりますから、どうか彼のソウセイキを」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
う/\芸者が話して居たとうのを、私共はれをきい下手人げしゅにんにはチャント覚えがあるけれども、云えば面倒だからその同窓の書生にもその時には隠して置いた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「こんなひどいけがを自分でする者はありませんよ。たしかに斬られたと思ったんですが……ところが、自分のまわりを見まわしても、誰も下手人げしゅにんらしい者がいない」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「わっしが下手人げしゅにんなので……申し立てをいたします……」とニコライは言った。
英国臣民が罪なしに殺害せられるような惨酷ざんこくな所業に対し、日本政府がその当然の義務を怠るのみか、薩州侯をして下手人げしゅにんを出させることもできないのは、英国政府を侮辱するものであるとし
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わけもなく下手人げしゅにんを挙げられると思ったところが大違い、臭い奴が三人も五人もいて、どれを縛ったものか、まるっきり見当が付かねえ。
さもないと、どんなお咎めを受けるかも知れないからな。自分の軒に立てかけてある材木が倒れて人を殺しても、下手人げしゅにんにとられる時代だ。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「この女は犬に喰われる前に殺されていたんだよ。下手人げしゅにんがここへかついで来て捨てて行ったんだよ。君、何か思い当る様なことはないかね」
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その人が夜更けに水道の栓をひねつたり、洗面盤の水をはねかしたりしたわけだ。だがまた、その下手人げしゅにんは必ずしも泊り客でなくてもいいわけだ。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
ときいた忠相のあたまに、電光のようにひらめいたのは、当時府内を震憾しんかんさせている逆けさがけの辻斬り、その下手人げしゅにんも左剣でなければならない一事だった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
小文治こぶんじは、それを見ると、不用意なじぶんの行動が後悔されてきた。母をうしなった悲しさに、いちずに龍太郎を下手人げしゅにんとあやまったがため、このことが起ったのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし書記殺しの下手人げしゅにんに至ると両人互に自分ではないと抗争し、果しなく言い募る。こうして警官の注意を他へらさぬ様にしてその間に首領を落そうと云う腹であったのだ。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「おまえらはさっそく、ここをくまなく捜査して、この下手人げしゅにんをさがしだせ。しかし、ゆだんはするな。ゆだんをすると、Z27号みたいなことになるぞ。まだ犯人は遠くへは行かぬはずだ」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
カピ妻 とふのも、あの二心ふたごころ下手人げしゅにんめが生存いきながらへてをるからぢゃ。
緊張しきった顔と顔、——たぶん平次の口から、二人まで人を殺した恐ろしい下手人げしゅにんの名を聞けるのかも知れないと思っている様子です。
この二つの証拠が揃ったので、もっぱら松蔵にかかり合いのある奴を探索にかかりましたが、下手人げしゅにんはどうも外から入り込んだ形跡がない。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
うちでだよ。君は行ったことがあるんだろう。下手人げしゅにんはまるで分らないと云うことだよ。とんだ目に遭ったものだね」
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その下手人げしゅにんは、まだ読者の記憶にもそう遠くはなっていない筈の——例の本位田又八ほんいでんまたはちであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「つけ火といたしますれば、下手人げしゅにんを出さねばなりませぬ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「けさ友達に見せているところを、運わるく城弾三郎殺しの下手人げしゅにん捜しに来ている、お神楽かぐらの清吉に見られてしまったんです」
それが心中の片相手ならば下手人げしゅにんにもなりますが、女は自分ひとりで死んだんですから、男は別に構ったことはありません。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼がその下手人げしゅにんだと疑われる様な証拠は、一つもない筈ですから、そんなに心配しなくともよさそうなものですが、でも、それを知っているのがあの明智だと思うと
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
忠盛どのも、知らぬといい、じじの木工助も、知らぬといい張る。……平太や、そなたはまさか、母のわたくしへ、うそはいわないでしょう。いってごらんなさい、その下手人げしゅにん
、十九で殺しちゃもったいなさ過ぎます。ね、親分。十手冥利じってみょうりにこいつは是が非でも下手人げしゅにんをあげて、思い知らさなきゃ虫が納まりませんよ
下手人げしゅにんが手をおろさずとも、お葉がおどろいて逃げ廻るはずみに、自分で足をすべらしてころげ落ちたのかも知れない。
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とすると、そこには下手人げしゅにんが必要だ。現場に何の証拠もなければ、警察は被害者の死を願う様な立場にある人物を探すに相違ない。奥村一郎は日頃敵を持たぬ男だった。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
『ほんとか。まちがいないのか。……殺したのは、だれなのだ。下手人げしゅにんは。下手人は?』
第一番に下手人げしゅにんにらまれて、すぐにも縛られそうになっているのを、万七と子分とのひそひそ話で知った婆やのお谷は
「むむ。きのう浅草のお祭りへ行って、よく拝んで来たので、三社様が夢枕に立ってお告げがあった。下手人げしゅにんはまだ判らねえか。かかあはどうしている」
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「この部屋にいると、云うのですか。我々の中に、その、下手人げしゅにんが、いるとでも、云うのですか」
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「いつぞや、山門の者を、手痛い目にあわせた下手人げしゅにんも、こいつであろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そいつは面白い。四年間江戸中に火事をこしらえた下手人げしゅにんを挙げると、大した手柄になるぞ。すぐ手をつけてみるがいい」
下手人げしゅにんはまだ確かには判らないが、村の百姓甚右衛門のせがれ甚吉というのが先ず第一の嫌疑けんぎ者として召捕られた。
真鬼偽鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おせいこそ下手人げしゅにんであるむねを、如何程か書き度かったであろうに、不幸そのものの如き格太郎は、それさえ得せずして、千秋せんしゅう遺恨いこんいだいて、ほし固って了ったのである。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「その下手人げしゅにんは、友松さまだったのですか」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなわけには行かないよ。本当に勇太郎が下手人げしゅにんなら、あんなにあわてるはずはない。それにあれだけの傷をこさえたんだから、下手人はうんと血を
これもそのままで済んでいれば無事であったが、ことしの十月六日の夜に、主人の左京と妾のお関が他人に殺害された。下手人げしゅにんは中間の伝蔵であった。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何を考えるひまもなかった。この不意の下手人げしゅにんが張子の岩だなどとどうして気が附くものか。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
またも憎まれ者の万七が、平次と仲の好い喜三郎への嫌がらせに、いち早くも下手人げしゅにんをさらって行ったのでしょう。