トップ
>
一人前
>
いちにんまえ
ふりがな文庫
“
一人前
(
いちにんまえ
)” の例文
長吉は蘿月の伯父さんのいったように、あの時分から三味線を
稽古
(
けいこ
)
したなら、今頃はとにかく
一人前
(
いちにんまえ
)
の芸人になっていたに違いない。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「じぶんのこと忘れて。久子だって人の前じゃろくに
唱歌
(
しょうか
)
もうたえなかったじゃないか。それでもちゃんと、
一人前
(
いちにんまえ
)
になったもの」
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
「うちの安雄はな、もう
今日
(
きょう
)
から、
一人前
(
いちにんまえ
)
のおとなになったでな、子どもとは遊ばんでな、子どもは子どもと遊ぶがええぞや」
小さい太郎の悲しみ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
しかし桃太郎は必ずしも幸福に一生を送った
訣
(
わけ
)
ではない。鬼の子供は
一人前
(
いちにんまえ
)
になると番人の雉を
噛
(
か
)
み殺した上、たちまち鬼が島へ
逐電
(
ちくでん
)
した。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
知恩院
(
ちおんいん
)
の
勅額
(
ちょくがく
)
を見上げて高いものだと悟った。御飯も
一人前
(
いちにんまえ
)
は食うようになった。水底の藻は土を離れてようやく浮かび出す。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
一人前
(
いちにんまえ
)
の弁護士となって日々
京橋区
(
きょうばしく
)
なる事務所に通うて
居
(
い
)
ましたが、
若
(
も
)
し
彼
(
あ
)
のまゝで今日になったら、養父も其目的通りに僕を始末し
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
一日かかって四十
把
(
ぱ
)
の
楮
(
かぞ
)
を
漉
(
す
)
くのは、普通
一人前
(
いちにんまえ
)
の極度の仕事であったが、おとらは働くとなると、それを八十把も漉くほどの働きものであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
こんなにみんな大きくなって、めいめい
一部屋
(
ひとへや
)
ずつを要求するほど
一人前
(
いちにんまえ
)
に近い心持ちを
抱
(
いだ
)
くようになってみると、何かにつけて今の
住居
(
すまい
)
は
狭苦
(
せまぐる
)
しかった。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「三吉は、まだ七つだけれど、恐ろしく目のよく利く奴さ。三吉の目と、わしの耳とを一つにすると、
一人前
(
いちにんまえ
)
の若者よりも、もっといいお役に立つかと思う位だよ」
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「お前は手習よか裁縫です。着物が満足に縫えなくては女
一人前
(
いちにんまえ
)
として嫁にゆかれません」
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
人の天然生まれつきは、
繋
(
つな
)
がれず縛られず、
一人前
(
いちにんまえ
)
の男は男、一人前の女は女にて、自由自在なる者なれども、ただ自由自在とのみ唱えて
分限
(
ぶんげん
)
を知らざればわがまま放蕩に陥ること多し。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
山口達馬に
青砥伊織
(
あおといおり
)
という、名前だけは
一人前
(
いちにんまえ
)
の若い門弟が二人軽いつもりで持ち上げようとしたその鎧櫃が、めっぽう重いので、ビックリ顔を見あわし、ポカンと立っておりますと……。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
答『それはある。
竜神
(
りゅうじん
)
とて
修行
(
しゅぎょう
)
を
積
(
つ
)
まねば
一人前
(
いちにんまえ
)
にはなれない……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「どうかして
一人前
(
いちにんまえ
)
の人間にしてやろうと思って、方々
駈
(
かけ
)
ずりまわって、金をこしらえて店を持ったり何かしたのが、私の見込ちがいだったのです」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その時分は
蕎麦
(
そば
)
を食うにしても、
盛
(
もり
)
かけが八厘、
種
(
たね
)
ものが二銭五厘であった。牛肉は
普通
(
なみ
)
が
一人前
(
いちにんまえ
)
四銭で、ロースは六銭であった。
寄席
(
よせ
)
は三銭か四銭であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
辰子はほとんど
狡猾
(
こうかつ
)
そうにちらりと姉へ微笑を送った。広子はこの微笑の中に突然
一人前
(
いちにんまえ
)
の女を
捉
(
とら
)
えた。もっともこれは東京駅へ出迎えた妹を見た時から、時々意識へ
上
(
のぼ
)
ることだった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自
(
おのず
)
から
一人前
(
いちにんまえ
)
の役人のような者になって、金も四百両ばかり
貰
(
もらっ
)
たかと思う。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「僕の詫
様
(
よう
)
が
空々
(
そらぞら
)
しいとでも云うのかね、なんぼ僕が金を欲しがるったって、これでも
一人前
(
いちにんまえ
)
の男だよ。そうぺこぺこ頭を下げられるものか、考えても御覧な」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その論の大意にいわく、人の一身は他人と相離れて
一人前
(
いちにんまえ
)
の全体をなし、みずからその身を取り扱い、みずからその心を用い、みずから一人を支配して、務むべき仕事を務むるはずのものなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
自分の
面
(
つら
)
あ
今戸焼
(
いまどやき
)
の
狸
(
たぬき
)
見たような癖に——あれで
一人前
(
いちにんまえ
)
だと思っているんだからやれ切れないじゃないか
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人が盗まれたのならいざ知らず、自分が盗まれておきながら、明瞭の答が出来んのは
一人前
(
いちにんまえ
)
ではない証拠だと、思い切って「盗難品は……山の芋一箱」とつけた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「出るなら出るさ。お前ももう
一人前
(
いちにんまえ
)
の人間だから」と云ってしばらく煙ばかり吐いていた。それから「しかしおれがお前を出したように
皆
(
みん
)
なから思われては迷惑だよ」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
他
(
ひと
)
も自分を一歩社会から遠ざかったように大目に見てくれる。こちらには
一人前
(
いちにんまえ
)
働かなくてもすむという安心ができ、向うにも一人前として取り扱うのが気の毒だという遠慮がある。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何しろ一万余人もかたまって、毎日毎日いっしょに働いて、いっしょに飯を食って、いっしょに寝ているんだから、自分だって七日も練習すれば、
一人前
(
いちにんまえ
)
に堕落する事はできるに違ない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分に利用するのは養子の権利かも知れないが、こんなものの御蔭を蒙るのは
一人前
(
いちにんまえ
)
の男としては気が
利
(
き
)
かな過ぎると思うと、あり余る本を四方に積みながら非常に
意気地
(
いくじ
)
のない心持がした。
『東洋美術図譜』
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「なるほど哲学者だけあらあ。それで、もう少し判然すると
一人前
(
いちにんまえ
)
だがな」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
子供の内は親のいうことばかり聞いておっても、段々
一人前
(
いちにんまえ
)
になって来るとインデペンデントというものは自然に発達して来る。また発達しても
然
(
しか
)
るべきような時期に到着するのであります。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いっしょにいるためにはいっしょにいるに充分なるだけ個性が合わなければならないだろう。昔しなら文句はないさ、異体同心とか云って、目には夫婦二人に見えるが、内実は
一人前
(
いちにんまえ
)
なんだからね。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“一人前”の意味
《名詞》
一人前(いちにんまえ)
一人が一回の飲食で食べたり飲んだりするのに適切と考えられる量の食べ物や飲み物。それらを入れるのに適した食器。一人分の食べ物、飲み物、食器。
積極的な助力がなくてもするべきことをできるような、成熟した技量や人格を持つ人間。一丁前。
年齢や肉体が大人あるいは大人と見なせるような人間。一丁前。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
“一人”で始まる語句
一人
一人子
一人娘
一人息子
一人一人
一人々々
一人旅
一人女
一人言
一人法師