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わうふく
既に
塔の
建立も
終つたので、
最早歸途に
向ふ
一方である。
往復五日の
豫定が、
其二日目には
首尾よく
歸終に
就くやうになつたのは、
非常な
幸運である。
年齡を
積むに
從つて
短く
感ずる
月日がさういふ
間に
循環して、くすんで
見えることの
多い
江戸川の
水を
往復する
通運丸の
牛が
吼えるやうな
汽笛も
身に
沁みて
河面は
対岸の
空に
輝く
朝日ビールの
広告の
灯と、
東武電車の
鉄橋の
上を
絶えず
徃復する
電車の
燈影に
照され、
貸ボートを
漕ぐ
若い
男女の
姿のみならず
宗助の
此處を
訪問したのは、十
月に
少し
間のある
學期の
始めであつた。
殘暑がまだ
強いので
宗助は
學校の
徃復に、
蝙蝠傘を
用ひてゐた
事を
今に
記憶してゐた。