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さくらやま
秋、
冬、
遊山に
来る、
桜山も、
桃谷も、あの
梅林も、
菖蒲の
池も
皆父様ので、
頬白だの、
目白だの、
山雀だのが、この
窓から
堤防の
岸や、
柳の
下や、
蛇籠の
上に
居るのが
見える
秋晴の
或日、裏庭の
茅葺小屋の風呂の
廂へ、向うへ
桜山を見せて掛けて置くと、
午少し前の、いい天気で、
閑な折から、雀が一羽、……
丁ど目白鳥の上の
廂合の
樋竹の中へすぽりと入って
櫻山に
夏鶯音を
入れつゝ、
岩殿寺の
青葉に
目白鳴く。なつかしや
御堂の
松翠愈々深く、
鳴鶴ヶ
崎の
浪蒼くして、
新宿の
濱、
羅の
雪を
敷く。そよ/\と
風の
渡る
處、
日盛りも
蛙の
聲高らかなり。
戲れに
箱根々々と
呼びしが、
人あり、
櫻山に
向ひ
合へる
池子山の
奧、
神武寺の
邊より、
萬兩の
實の
房やかに
附いたるを
一本得て
歸りて、
此草幹の
高きこと一
丈、
蓋し
百年以來のもの
也と
誇る