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櫻山
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さくらやま
櫻山に
夏鶯音を
入れつゝ、
岩殿寺の
青葉に
目白鳴く。なつかしや
御堂の
松翠愈々深く、
鳴鶴ヶ
崎の
浪蒼くして、
新宿の
濱、
羅の
雪を
敷く。そよ/\と
風の
渡る
處、
日盛りも
蛙の
聲高らかなり。
戲れに
箱根々々と
呼びしが、
人あり、
櫻山に
向ひ
合へる
池子山の
奧、
神武寺の
邊より、
萬兩の
實の
房やかに
附いたるを
一本得て
歸りて、
此草幹の
高きこと一
丈、
蓋し
百年以來のもの
也と
誇る