黒髯くろひげ)” の例文
朱鷺色ときいろ扱帶しごきふので、くだん黒髯くろひげおほきなひざに、かよわく、なよ/\とひきつけられて、しろはな蔓草つるくさのやうにるのをた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いっ今夜こよいはこのままで」トおもう頃に漸く眼がしょぼついて来てあたまが乱れだして、今まで眼前に隠見ちらついていた母親の白髪首しらがくびまばら黒髯くろひげが生えて……課長の首になる
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
不意に橋の上に味方の騎兵があらわれた。藍色の軍服や、赤い筋や、鎗の穂先が煌々きらきらと、一隊すぐって五十騎ばかり。隊前には黒髯くろひげいからした一士官が逸物いちもつまたがって進み行く。
乾坤一擲けんこんいってき、二ツの木剣は広場の真っ唯中に組み置かれた。一方から静々と現われたのは扮装いでたち変らぬ春日重蔵、反対側から徐々と進み出たのはいまだ名乗りを聞かぬ黒髯くろひげの武士だ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その御者ぎよしやはこと/″\く女裝せり。忌はしき行裝かな。女帽子の下よりあらはれたる黒髯くろひげ、あら/\しき身振、皆程を過ぎて醜し。我はきのふの如く此間に立ちて快を取ること能はず。
王さまは黒髯くろひげまった大蔵大臣おおくらだいじんわれました。
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かしこまつてさふらふと、右左みぎひだりから頸首えりくびつてのめらせる、とおめかけおもておほうたとき黒髯くろひげまゆひそめて
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うるしなかまなこかゞやく、顏面がんめんすべひげなるが、兩腿りやうもゝしたむくぢやら、はりせんぼん大胡坐おほあぐらで、蒋生しやうせいをくわつとにらむ、と黒髯くろひげあかほのほらして、「何奴どいつだ。」と怒鳴どなるのが、ぐわんとひゞいた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)