黄金色きんいろ)” の例文
睦田むつだ老巡査はフト立ち止まって足下あしもとを見た。黄色い角燈かくとうの光りの輪の中に、何やらキラリと黄金色きんいろに光るものが落ちていたからであった。
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
下には黄金色きんいろをしたかわらいてすこしの塵もなかった。老嫗は青年を伴れて遊廊かいろうを通って往った。遊廊の欄干も皆宝石であった。
賈后と小吏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
黄金色きんいろのお日さまの光が、とうもろこしの影法師かげぼうしを二千六百寸も遠くへ投げ出すころからさっぱりした空気をすぱすぱ吸って働き出し、夕方は
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黄金色きんいろの飾りをしたコルセット、肩から胸まで真白な肌があらわれ、恰好のよい腰の下に雑色のスカートがぱっと拡がると
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は独り自分の臥榻ねいすの上にもたれて、黄金色きんいろの長髪の間にはなはだ高い眉がしらをややしわめて、旧游きゅうゆうの地ビルマ、ビルマの夏の夜を偲んでいたのだ。
鴨の喜劇 (新字新仮名) / 魯迅(著)
大理石のやうな水蒸氣の幕の背後でチラ/\燃えてゐて隙間々々から黄金色きんいろの赤色が輝やいてゐるかのやうに見えた。
真個に、つるりと一嚥にして仕舞い度い程真丸で、つるつると笑みかけた黄金色きんいろのお月様! 黄金色きんいろのお月様!
C先生への手紙 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
鼻から口から眼から臍から這込むきりすと。藝術の假面。そこで黄金色きんいろに偶像が塗りかへられる。
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃 (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
道の両側には薄の穂がゆれ、あちこちに女郎花をみなへしはぎの花が咲いてゐます。その間をくぐつて行くと、雑木林をもれる黄金色きんいろの秋のまぶしくキラ/\と、肩先や足下でゆれ動きます。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
陽のあたっている窓の枠を、黄金色きんいろの額縁とすれば、窓の内部の闇は、黒一色に塗りつぶされた背景であり、そういう額の面に、男の首級くび一個ひとつが、生白く描かれているといってよかった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
竹の骨のなかでキラリと光った黄金色きんいろの細い線。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その足もとから黄金色きんいろ熔岩ようがんがきらきら流れ出して、見るまにずうっと扇形にひろがりながら海へはいりました。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その候補生は鼻の下とあごに、黄金色きんいろの鬚が薄く、モジャモジャと生えかけている、女のような美少年であった。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山男は腰かけるとこんどは黄金色きんいろの目玉をえてじっとパンやしおやバターを見つめ〔以下原稿一枚?なし〕
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その中でも隣りのへやとの仕切りの垂れ幕には、特別に大きい、黄金色きんいろのさそりだの、燃え立つような甘草かんぞうの花だの、真青な人喰い鳥だのがノサバリまわっていた。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お日さまの黄金色きんいろの光は、うしろの桃の木の影法師かげぼうしを三千寸も遠くまで投げ出し、空はまっ青にひかりましたが、誰もカイロ団に仕事をたのみに来ませんでした。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
念のために、赤い達磨の灰落しを覗いてみると、中には葉巻の灰の一片すらなく、相も変らぬ大欠伸を続けたまま、黄金色きんいろと黒の瞳でグリグリと私を睨み上げている。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もう何もかもつらいことばかりじゃ。さて今東の空は黄金色きんいろになられた。もう月天子がってんしがお出ましなのじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
中から古ぼけた革のサックを取り出して、黄金色きんいろの止め金をパチンと開きました。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
王子はこうの鈴蘭すずらんもとからチクチクして来る黄金色きんいろの光をまぶしそうに手でさえぎりながら
そらながれ出したぞ。すっかり黄金色きんいろになってしまった。うまいぞ、うまいぞ。そらまた火をふいた
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そら、もうあかるくなったぞ。うれしいなあ。ぼくはきっと黄金色きんいろのおほしさまになるんだよ。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
俥屋くるまやはまるでまっかになってあせをたらしゆげをほうほうあげながらひざかけをりました。するとゆっくりと俥からりて来たのは黄金色きんいろ目玉あかつらの西根山にしねやまの山男でした。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いつかきりがすうっとうすくなって、お日さまの光が黄金色きんいろすきとおってきました。やがて風がきりをふっとはらいましたので、つゆはきらきら光り、きつねのしっぽのような茶色の草穂くさぼ一面いちめんなみを立てました。
なるほど、東にはうすい黄金色きんいろの雲の峯が美しくそびえています。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
東の空が黄金色きんいろになり、もう夜明けに間もありません。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ことしは千にん黄金色きんいろどもがまれたのです。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)