高低たかひく)” の例文
それに、藁屋わらやや垣根の多くが取払われたせいか、峠のすそが、ずらりと引いて、風にひだ打つ道の高低たかひく畝々うねうねと畝った処が、心覚えより早や目前めさきに近い。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高低たかひくな高原地で、雪はチラバラ、草が少しくあっちこっちに生えて居るというような所を通りまして五里半ばかり行きますとキャンチュの川端に出ました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
みんなが十二銭づつだとさ、税金を安くして高低たかひくなしにして下すつた。本当に公平な賢い殿様だ。」
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
けれども自分を京都の下加茂あたりに住んで居る気分にさせるのは、それは隣の木深こぶかい庭で、二十本に余るマロニエの木の梢の高低たかひくが底の知れない深い海の様にも見える。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
くも脚下あしもとおこるかとみれば、たちまちはれ日光ひのひかりる、身は天外に在が如し。この絶頂はめぐり一里といふ。莽々まう/\たる平蕪へいぶ高低たかひくの所を不見みず、山の名によぶ苗場なへばといふ所こゝかしこにあり。
今ひとつのほうはまりといって、空に向かって、二つまたは三つの手毬を投げあげて、手に受けてはまたげるという動作をくり返すあそびで、このほうは毬の高低たかひくによって
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何軒となく立ちならんでいる妓楼ぎろうは、ただ真黒なものの高低たかひくの連なりにすぎないけれども、そのどの家からも、女のはしゃぎきった、すさんだ声が手に取るように聞こえていた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
踏みかえした足跡が高低たかひくになって、時々つんのめったりしてかえって歩きにくい。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
すすきの根の残っている高低たかひくの土を踏みながら、ふた足三足通り越して振り返ると、尼も僕の足音に初めて気がついたらしく、俯向いていた目をあげてこっちをぬすむようにそっと見た。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
北の海岸から走って来た電信柱は高低たかひくに南へとつらなっている。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
大小建築の軒並のきなみ屋根高低たかひくに立並び、立續き
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
家家いへいへ高低たかひくのき
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
くも脚下あしもとおこるかとみれば、たちまちはれ日光ひのひかりる、身は天外に在が如し。この絶頂はめぐり一里といふ。莽々まう/\たる平蕪へいぶ高低たかひくの所を不見みず、山の名によぶ苗場なへばといふ所こゝかしこにあり。
すがりついて攀上よじのぼるように、雪の山を、雪の山を、ね、貴方、お月様の御堂をあてに、氷にすべり、雪を抱いて来なすって、伏拝んだ御堂から——もう高低たかひくはありません、一面白妙しろたえなんですから。
稲の下にもすすきの中にも、細流せせらぎささやくように、ちちろ、ちちろと声がして、その鳴く高低たかひくに、静まった草もみじが、そこらのかりあとにこぼれたあわの落穂とともに、風のないのに軽く動いた。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
青田の高低たかひくふもと凸凹でいりに従うて、やわらかにのんどりした、この一巻ひとまきの布は、朝霞には白地の手拭てぬぐい、夕焼にはあかねの襟、たすきになり帯になり、はてすすきもすそになって、今もある通り、村はずれの谷戸口やとぐち
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お危うございますよ、敷石に高低たかひくがありますから。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)