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はなむけ
ふりがな文庫
“
餞別
(
はなむけ
)” の例文
もっとも
些少
(
さしょう
)
の
東西
(
もの
)
なれども、こたびの路用を
資
(
たす
)
くるのみ。わが
私
(
わたくし
)
の
餞別
(
はなむけ
)
ならず、
里見殿
(
さとみどの
)
の
賜
(
たま
)
ものなるに、
辞
(
いろ
)
わで納め給えと言う。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、誰にも、その至難の大役が思いやられ、悲壮な決死行の門出にある友にたいして、
餞別
(
はなむけ
)
のことばもない心地に打たれたからである。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忠「お
父
(
とっ
)
さん、一つ事ばかり云ってゝ困るね
其様
(
そん
)
な事を云うものではない、
明日
(
あした
)
お立だからお
餞別
(
はなむけ
)
をしなければなりませんよ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それにしても進一さんて人は
幸福
(
しあわせ
)
だなア、お蘭ちゃんのような可愛らしい人を嫁さんにするなんて。……おいお蘭ちゃん、俺らお前さんに
餞別
(
はなむけ
)
するぜ。
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それが憎い! 憎ければこそ容保候へせめてもの
餞別
(
はなむけ
)
しようと、会津への援兵申し付けたのにどこが悪いぞ。のう永井! 石川! 年はとりたくないものよな
十万石の怪談
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
▼ もっと見る
芭蕉が別れるに臨んで「麦の穂をたよりにつかむわかれかな」と詠んだ、その時の
餞別
(
はなむけ
)
の句の一である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
新築祝いだの転任の
餞別
(
はなむけ
)
だのと、何か因縁をつけて持ち込むのがこの先生の癖である。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
渡し又
出精
(
しゆつせい
)
致せし
故
(
ゆゑ
)
私し手元より
褒美
(
はうび
)
十兩
遣
(
つかは
)
し其外遊女共より
餞別
(
はなむけ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「あなたの、いまの言葉が、道之進にとってはなによりの
餞別
(
はなむけ
)
です。これでもう、怖れるものはありません……小母上にはお眼にかからずにまいります。どうぞお二人とも御健固でいらしってください」
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ところで注意を一つ
餞別
(
はなむけ
)
にする」
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼の家には、出陣の
餞別
(
はなむけ
)
を呈するため、知己朋友が集まっていた。帰るとすぐ、龐徳は召使いを走らせて、死人を納める
柩
(
ひつぎ
)
を買いにやった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
餞別
(
はなむけ
)
に「弟、無事で行ってまいれ」という御一言を承われば、山三郎心
遺
(
のこ
)
さず勇ましく出立致します、どうか此の儀恐れ入りますがお聞済み下されますよう」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「万吉と一緒に、阿波へお渡りあろうという御決心、けなげに存ずる。で——鴻山が心ばかりの
餞別
(
はなむけ
)
、おうけとり願いたい」
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宮「なにを云うのだ、そんな事を云っては分らん、気になって成らんが、何ぞ
餞別
(
はなむけ
)
を遣ろうかの」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、まず張遼の手から路銀を贈らせ、なお後の一将を顧みて、持たせてきた一領の錦の
袍衣
(
ひたたれ
)
を取寄せ、それを関羽に
餞別
(
はなむけ
)
せん——とこういった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
餞別
(
はなむけ
)
を実は頂戴に出ましたので、その
餞別
(
はなむけ
)
は申すも恐入りますが、
誰
(
たれ
)
も居りませんから申しますが、
私
(
わたくし
)
は運が
好
(
よ
)
ければ殿様のお側に居りまして、
他
(
た
)
へ養子に参りましても
鞍置馬
(
くらおきうま
)
に
跨
(
またが
)
り
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして、手ずから縫った守り袋の地蔵菩薩を
餞別
(
はなむけ
)
にくれたのだった。が、その守り袋は、つい、藤夜叉へ与えてしまった。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
病気の
薬代
(
やくだい
)
にでもする積りで
此方
(
こっち
)
に持ち掛けたのを幸いに、己もそうとは知りながら、ツイ男のいじきたな、手を出したのは此方の
過
(
あやま
)
りだから、何も云わずに千疋を出し、別段
餞別
(
はなむけ
)
にしようと思い
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、良人の帰るまでを、わが居間に遊ばせておき、
餞別
(
はなむけ
)
には何を贈ろうか、覚一は何がお好きかなどと、ねぎらっていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忠「お
餞別
(
はなむけ
)
をしなさいよ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「それから、この一封の路銀、ならびにこの一腰は、どちらも正木作左衛門様からの、お心こめたお
餞別
(
はなむけ
)
でございます」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ままになるなら、その少年たちに会って、自分の精神の一片でも、
餞別
(
はなむけ
)
に語って、信念の中に持たせてやりたいが」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
兼好という法師に仕えている
童
(
わらべ
)
から
餞別
(
はなむけ
)
にもらった雀の子を配所で育てたものですと語り、そしてこの日の父子
邂逅
(
かいこう
)
に、はじめて一つニコとなされた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただおからだのみは御自身のものだから、天寿に仕えて素直にお持ちあるように。——それ以外、お
餞別
(
はなむけ
)
のことばとておざらぬ。お大事にお出ましあれ
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最後の大饗宴をひらいて、莫大な金銀を
餞別
(
はなむけ
)
に贈り、翌朝、全山を挙げて、いよいよ彼を送別することになった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これは、
昂校尉
(
こうこうい
)
の奥さんが髪かざりや衣服を売り払って、われわれの
餞別
(
はなむけ
)
に持ってきて下すったお酒だぞ」
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「云うまでもございません。じゃ一筆書いてもらいましょうか。幸い、新九郎様へお渡しするこの品と一緒に差し上げれば、何よりよいお
餞別
(
はなむけ
)
でごぜえますから」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よいか! 聞こえたか、銀五郎! 法月弦之丞の今日の誓い、これを
黄泉
(
よみじ
)
の
餞別
(
はなむけ
)
として受けてくれい……
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
餞別
(
はなむけ
)
の品とを、春日新九郎に渡したい一念で、丹後から京都路へ追いかけて来たが、八方の街道口、宿場、立場へ頼んで、手分けをして尋ねている甲斐もなく、ついに
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「この者に、良い馬をとらせ、華々しく、酒肴を調えて、門出の
餞別
(
はなむけ
)
をしてつかわせ」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孔明から
餞別
(
はなむけ
)
に送られたその内の一つを、趙雲は急に開けてみた。すると果たして孔明の秘策が今の心配によく当てはまっていた。彼はさっそく侍女を通じて、玄徳に目通りを求めた。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なんとかして引き留めようと努めたのはもちろんだが「またのご縁をたのしみ」という
強
(
た
)
っての辞意に
諦
(
あきら
)
めのほかなく、衣服
銀子
(
ぎんす
)
などの
餞別
(
はなむけ
)
を積んで、この歓送宴となったものだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「白龍。なぜあちらの大勢にも
餞別
(
はなむけ
)
せんのだ。早く一献ずつでも祝ってあげろ」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
路銀や小袖の
餞別
(
はなむけ
)
など、何くれとなく、さすがに離情をこめて心づけてくれる。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伯母の清子が、覚一に与えた
餞別
(
はなむけ
)
のうちには、その日課地蔵の一枚もあった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
難波
(
なにわ
)
の葭に、
行々子
(
よしきり
)
の
音
(
ね
)
が高い。花はちり、行く春の
巷
(
ちまた
)
に、
埃
(
ほこ
)
りが舞って、長い長い甲冑の武者や馬の出陣列に、花つむじが幾つもの小さいつむじを捲き、それが自然の
餞別
(
はなむけ
)
のように見えた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と寺侍たちも、ここに小次郎の旅先を
餞別
(
はなむけ
)
して、中堂の方へ帰って行った。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そういう事にも、
篤
(
とく
)
と、眼を
啓
(
ひら
)
いて来なければいかん。
餞別
(
はなむけ
)
いたそう
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、尼前の肌にはなお、上杉、足利御両家から
餞別
(
はなむけ
)
された金も
温
(
ぬく
)
もッているはずだし、またいッそ、
脅
(
おど
)
し脅し、遠くへまで連れて行って、売り飛ばせば、その上の大金もつかめようというものだ。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——ところで、豪傑がたに、心ばかりなお
餞別
(
はなむけ
)
を仕りたいが」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貴公もまた、関羽のために、血の
餞別
(
はなむけ
)
にやってきたか
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ということを、
餞別
(
はなむけ
)
のことばとして、一同見送った。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はや
赴
(
ゆ
)
け」と、
餞別
(
はなむけ
)
した。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
餞
漢検1級
部首:⾷
17画
別
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
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餞別物