おでこ)” の例文
章一ははかまひもを結んでいた。章一は右斜みぎななめに眼をやった。じぶんが今ひげっていた鏡台の前に細君さいくんおでこの出たきいろな顔があった。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
天窓あたまの大きな、あごのしやくれた、如法玩弄にょほうおもちゃやきものの、ペロリと舌で、西瓜すいか黒人くろんぼの人形が、ト赤い目で、おでこにらんで、灰色の下唇したくちびるらして突立つったつ。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「向う疵の兼」というのは恐ろしい出歯でばだから一名「出歯兼でばかね」ともいう。クリクリ坊主のおでこが脳天から二つに割れて、又喰付くいつき合った創痕きずあとが、まゆの間へグッと切れ込んでいるんだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、てれもしないで、おでこを光らせながら、玄也はさう言つてゐるのである。その様子が、ほんとうにいい気になつて、幾分の気取りをさへ持ちながら言つてゐるやうにも見えるのだ。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
さてそれらのおでこの辺りを、古靴の底でポンと叩いて
明るくおでこの照る「三遊亭円右」の
山の手歳事記 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
ふ。天窓あたまおほきな、あごのしやくれた、如法玩弄によはふおもちややきものの、ペロリとしたで、西瓜すゐくわ黒人くろんぼ人形にんぎやうが、トあかで、おでこにらんで、灰色はひいろ下唇したくちびるらして突立つゝたつ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
格子戸外そとのその元気のいい声に、むっくり起きると、おっと来たりで、目はくぼんでいる……おでこをさきへ、門口かどぐちへ突出すと、顔色の青さをあぶられそうな、からりとした春たけなわな朝景色さ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猪口ちょこに二つか、三つか、とお思いなすったのが、沈んでばかり飲むせいか、……やがて、近常さんの立ちなすった時は、一座大乱れでもって、もうね、素裸のおでこへ、おひらふた顱巻はちまきで留めて
大きな、ハックサメをすると煙草たばこを落した。おでここッつりで小児こどもは泣き出す、負けた方は笑い出す、よだれと何んかと一緒でござろう。鼻をつまんだ禅門ぜんもん苦々にがにがしき顔色がんしょくで、指を持余もてあました、塩梅あんばいな。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おでこをぴっしゃりでうなじを抱える。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)