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頬冠
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ほおかむり
ふりがな文庫
“
頬冠
(
ほおかむり
)” の例文
野良着をつけると、善ニョムさんの
身体
(
からだ
)
はシャンとして来た。ゆるんだタガが、キッチリしまって、
頬冠
(
ほおかむり
)
した顔が若やいで見えた。
麦の芽
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
西側の山路から、がさがさ笹にさわる音がして、
薪
(
たきぎ
)
をつけた馬を引いて
頬冠
(
ほおかむり
)
の男が出て来た。よく見ると意外にも村の常吉である。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
庄三郎はそれから
富士権現
(
ふじごんげん
)
の前へ往った。
祠
(
ほこら
)
の影から
頬冠
(
ほおかむり
)
した男がそっと出て来て、庄三郎に
覘
(
ねら
)
い寄り、手にしている出刃で横腹を
刳
(
えぐ
)
った。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
毎夜
頬冠
(
ほおかむり
)
して
吉原
(
よしわら
)
の
河岸通
(
かしどおり
)
をぞめいて歩くその連中と同じような身なりの男が
相
(
あい
)
も変らずその辺をぶらりぶらり歩いていたが
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それから二三日
経
(
た
)
つと、彼は屋敷下を通る
頬冠
(
ほおかむり
)
の丈高い姿を認めた。其れが博徒の親分であることを知った彼は、声をかけて無理に縁側に
引張
(
ひっぱ
)
った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
天水桶の陰に、しゃがんで、指先でなにかしきりに地面へ書いているのは、
頬冠
(
ほおかむり
)
でよくはわからないが
乾児
(
こぶん
)
の
勘弁勘次
(
かんべんかんじ
)
。十三夜の月は出でて間もない。
釘抜藤吉捕物覚書:05 お茶漬音頭
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一本選
(
え
)
り取って見たら、
頬冠
(
ほおかむり
)
した親爺が包を背負って竹皮包か何かを手に提げて居るのであった。
車上の春光
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
万平は材木の隙間から
飛退
(
とびの
)
いた。その隙間をジイッと睨んで腕を組んだ。芝居の事も何も忘れたらしく真青になって考え込んでいたが、そのまま鉢巻を解いて
眉深
(
まぶか
)
く
頬冠
(
ほおかむり
)
をした。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
溜池
(
ためいけ
)
の
真中
(
まんなか
)
あたりを、
頬冠
(
ほおかむり
)
した、色のあせた半被を着た、
脊
(
せい
)
の低い親仁が、腰を曲げ、足を
突張
(
つッぱ
)
って、長い
棹
(
さお
)
を
繰
(
あやつ
)
って、
画
(
え
)
の如く漕いで来る、筏は
恰
(
あたか
)
も人を乗せて、油の上を
辷
(
すべ
)
るよう。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大家
(
おおや
)
さんは火鉢と茶道具とを運んで来て、にこにこ笑いながら、「何かいるものがありましたなら遠慮なくおっしゃい」と言って、
禿
(
はげ
)
頭に
頬冠
(
ほおかむり
)
をして尻をまくった父親の姿を立って見ていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
長浜村まで出てみれば、盆踊が始まっている。浜の砂の上に大きな
圏
(
わ
)
を作って踊る。男も女も、手拭の
頬冠
(
ほおかむり
)
をして、着物の裾を
片折
(
はしょ
)
って帯に
挟
(
はさ
)
んでいる。
襪
(
たび
)
はだしもあるが、多くは素足である。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
巻
(
かん
)
を開けば図は
先
(
ま
)
づ武家屋敷長屋の壁打続きたる処にして
一人
(
ひとり
)
の女窓のほとりに
彳
(
たたず
)
み
頬冠
(
ほおかむり
)
せし
番付売
(
ばんづけうり
)
を呼止めて
顔見世
(
かおみせ
)
の番付
購
(
あがな
)
ふさまを描きたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
此の時長兵衛が
頬冠
(
ほおかむり
)
してきょろきょろとして来たが、伊右衛門を見つけた。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
余の伯父はすぐれた
大食家
(
たいしょくか
)
で、維新の初年こゝに泊って
鰻
(
うなぎ
)
の
蒲焼
(
かばやき
)
を散々に食うた為、勘定に
財布
(
さいふ
)
の底をはたき、淀川の三十石に乗る
銭
(
ぜに
)
もないので、
頬冠
(
ほおかむり
)
して川堤を大阪までてく/\歩いたものだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
湊屋は
頬冠
(
ほおかむり
)
を取って手を振った。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
色白く鼻の高い
尊
(
みこと
)
の面は貴族を代表し、
手拭
(
てぬぐい
)
で
頬冠
(
ほおかむり
)
をした、口のまがった、目っかちのひょっとこは農夫、もしくは一般の人民の顔を代表したもの。
仮寐の夢
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
行灯の灯を浴びて大きな犬のような赤毛の猫が
頬冠
(
ほおかむり
)
をして、二本の後肢で立ち、その足で調子をとりとり、前肢二本を手のように
揮
(
ふ
)
って踊っていた。それはその邸に年久しく飼われている猫であった。
猫の踊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
頬冠
(
ほおかむり
)
の頭をうな垂れて
草履
(
ぞうり
)
ぼと/\
懐手
(
ふところで
)
して本家に帰った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
先
(
まず
)
画面の下部に長き
橋梁
(
きょうりょう
)
を
斜
(
ななめ
)
に
横
(
よこた
)
はらしめよ、しかして淋しき
夜駕籠
(
よかご
)
と
頬冠
(
ほおかむり
)
の人の
往来
(
ゆきき
)
を見せ、見晴らす
水面
(
すいめん
)
の右の
方
(
かた
)
には夜の佃島を雲の如く浮ばせ
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そのすぐ
傍
(
そば
)
に泥まみれのモンペをはき、風呂敷で
頬冠
(
ほおかむり
)
をした若いおかみさんが、頭巾をかぶせた四、五歳の女の子と、大きな風呂敷包とを抱えて蹲踞んでいたが
にぎり飯
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
頬冠
(
ほおかむり
)
の人
肌寒
(
はださむ
)
げに
懐手
(
ふところで
)
して三々五々
河岸通
(
かしどおり
)
の
格子外
(
こうしそと
)
を
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
頬
部首:⾴
15画
冠
常用漢字
中学
部首:⼍
9画
“頬”で始まる語句
頬
頬杖
頬張
頬被
頬辺
頬骨
頬白
頬髯
頬桁
頬笑