革紐かわひも)” の例文
我はベルリンチオーン・ベルティが革紐かわひもと骨との帶を卷きて出で、またその妻が假粧けさうせずして鏡を離れ來るを見たり 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
パヴィースと云うて三角をさかしまにして全身をおおう位な大きさに作られたものとも違う。ギージという革紐かわひもにて肩から釣るす種類でもない。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「胸さわぎがする」と、奥へかくれたと思うと、覚明は、逞しい自分の腰に太刀の革紐かわひもゆわいつけながら出てきて、ありあう下駄を穿
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不幸な動物は、革紐かわひもにしめつけられて振るいたったが、痛ましくもまた下に倒れて、死んだようにじっと横たわった。
オンコッコが叫ぶと同時に社殿の扉が左右に開いて、まず現われたのはホーキン氏、次に引き出されたのはジョン少年で、二人ながら革紐かわひもで縛られている。
彼女を他の部屋へ運び出すと、裸にしてそこの真っ白いベッドの上に革紐かわひもで固く縛りつけた。彼女はもはや、そのまま朝田の蹂躪じゅうりんに任すよりほかに仕方がなかった。
猟奇の街 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ギロチンの下で両手を革紐かわひもくくられるとき、ジャフェリ博士がランドリュの耳もとでささやいた。
青髯二百八十三人の妻 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
御者は書巻を腹掛けの衣兜かくしに収め、革紐かわひもけたる竹根のむちりて、しずかに手綱をさばきつつ身構うるとき、一りょうの人力車ありて南より来たり、疾風のごとく馬車のかたわらをかすめて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
アーストロフ (壜を薬箱に納め、革紐かわひもをしめる)さあ、これでやっと帰れると。
益山は元気に叫び、たもとから革紐かわひもを出してたすきをかけた。これまで幾たびとなく決闘をし、たいてい勝ち取っている。みんなそれを知っているからなにも云わず、二人を中心に輪をひろげた。
いさましい話 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
伏見の直臣じきしんかわからないが、草鞋わらじばきで、太刀を革紐かわひもで背なかに負うた半具足の侍が、武者修行の気のつくまで、黙って立っていたのだった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足駄穿あしだばきで雨傘を提げて電車に乗ったが、一方の窓が締め切ってある上に、革紐かわひもにぶら下がっている人が一杯なので、しばらくすると胸がむかついて、頭が重くなった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
巾三尺長さ六尺、そういう立て板に一人の男が、革紐かわひもゆわいつけられていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「畠山氏、足袋の革紐かわひもが解けておる!」
だだら団兵衛 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ごッた返している中に、武者ぶるいをわめいている若者ばらの多い武者溜りへ、籠手こて革紐かわひもを結び結び姿を見せた一部将は
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其所には格子こうしの外に、ヘクターと云う英国産の大きな犬が、大きな口を革紐かわひもで縛られてていた。代助の足音を聞くや否や、ヘクターは毛の長い耳をふるって、まだらな顔を急に上げた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは、緋羽織の背なかへ、革紐かわひもで斜めに負っている陣刀づくりの大太刀である。りがなくて、竿さおのように長い。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歓宴かんえんならぬ歓も尽き、武者たちは早や具足の革紐かわひもを締め直し、打物って、持場持場の最後の死所へ散り始めた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神殿の広前ひろまえに、彼は、三尺余もある長刀を、革紐かわひもで帯にくくし、われとわが影を、月の白い地上に睨んでいた。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋根のおおいもなく、両側の腰も浅く、革紐かわひもを十文字あやに懸けて、わずかに身を支える程度にとどめ、輿上よじょうながら、大剣をふるって敵と戦闘するに便ならしめてある。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山上の一石に、ゆったり腰をすえ、かぶとよろいの革紐かわひもなどを締め、草の葉露をなめてやおら立ちかけた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たばこ入れは持たないし——ほかにべつに何も入れてある覚えはないが——とそっと手を落して、袖口に出してみると、よくなめしてある菖蒲色しょうぶいろ革紐かわひもが、いつでも解けるように
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狩衣かりぎぬのすそを旅支度にくくり、えりの下にはよろい小実こざねきらめいていた、長やかな銀作りの太刀を、革紐かわひも横佩よこばきにし、それでいて烏帽子えぼしをいただいた髪の毛は真っ白なのである
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
革紐かわひもをもってきびしくいましめ、屈強な力士が十重二十重に囲んでこれを孔明の本陣まで引っ立てて行ったが、陣内へ押し込むときも一暴れして、三、四人の兵が蹴殺されたほどだった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「鳥羽へ参るには、どの道をどう参ったらよいでござろうか」何気なく方角を指さして教えていると、四郎は、その侍が胸に革紐かわひもでかけている小筥こばこをいきなりムズとつかんで、りあげた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)