金山かなやま)” の例文
... 太田の金山かなやまへでも御一緒に参ってみたいものです。秋に山へ参ると松茸のほかに色々なきのこが出ていて面白うございましょうね」お登和嬢
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
まことに一葉のこの絵図面にこそ葡萄大谷の一大事が——と云うよりも天蓋山の金山かなやまに関する一大事がつなぎ掛けられているのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その金好きを見抜いて喰入ったのが、元甲州は武田家の能楽役者、大蔵十兵衛おおくらじゅうべえと申した奴。伊豆に金山かなやまの有る事を申上げてから、トントン拍子。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「それは大変でございます、ここは久々野の村外れとしましても、美濃の国境の金山かなやままでまだ二十里もございます」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御承知の上州太田の呑竜どんりゅう様、あすこにある金山かなやまというところが昔は幕府へ松茸を献上する場所になっていました。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と篠田のばし其名を思ひ出し得ざるに、花吉が「あの、金山かなやま伯爵でせう、——小米さんもいやがつて居たんですよ、頭の禿げた七十近い老爺おぢいさんでしてネ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
次に天のヤスの河の河上にある堅いいわおを取つて來、また天の金山かなやまの鐵を取つて鍛冶屋かじやのアマツマラという人を尋ね求め、イシコリドメの命に命じて鏡を作らしめ
三日ほど経ちまして縛られてまいりました悪者三人は、百々村のくら八と太田の金山かなやまの松五郎、今一人いちにんは江田村の源藏げんぞうで、段々お調べになると、其の者共の申口もうしぐち
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仕掛あり其下はよどみて水深げに青みたるに鵞鳥がてうの四五羽遊ぶさながら繪なり八幡を過ぎ金山かなやま阪下にて車は止る瓜生峠うりふたふげを越ゆるに四歳よつばかりの女子めのこ父に手を引かれて峠を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
家康が濃州のうしゅう金山かなやまの城主森忠政もりただまさを信州川中島に転封てんぽうしたおり、その天守閣と楼櫓やぐらとを時の犬山城主石川光吉に与えた、それをあくる年の五月に木曾川をくだしてこの犬山に運び
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
猟師 (振りむいて)はい、美濃の加納かのうへ行くならこの道だ、下原しもばら金山かなやま太田おおたと出て行くさ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
ところで明治二十八年になって、やはり同国御野郡みのごおり金山かなやまの人に「神の告げがあった」と云って、三人の者がれだって訪ねて来たから、尊も始めて神仙の話をして聞かせた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
信州沢、金山かなやま沢の三に岐れ、金山沢は更に石塔沢を分ち、いずれも特長ある沢を成している。
秩父の渓谷美 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
新庄に近い舟形ふながた村の長沢ながさわでは、今もまじりけのない生漉紙きずきがみを生みます。悪く作ることを知らない漉場すきばの一つであります。最上郡の金山かなやまには盆だとか木皿だとかを作るよい店を見かけました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
飛騨国ひだのくにでは高山に二日、美濃国みののくにでは金山かなやまに一日いて、木曽路きそじを太田に出た。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこで伊豆の金山かなやまほりの経験のある自分が、工事の相談と人足の口入れに招かれて来たのである——とは、運平親方が、晩酌にやる焼酎しょうちゅうのごきげんで、よく自慢する糸瓜へちま棚の下のはなしだった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
居るか居ないか知らないが、外国では炭坑でも、金山かなやまでも護謨ゴム林でも開けると器械より先に、まず日本の天草女が行くんだ。それからその尻をぎ嗅ぎ毛唐の野郎がくっ付いて行って仕事を初める。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なんでも笊の奥沢から越えてきた、金山かなやま探しと猟師の連中だった。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
久方ひさかたあま金山かなやま加佐米山かさめやま雪ふりつめり妹は見つるや
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
金山かなやまで働いてたんだよ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
あの子を勾引かどわかした事からづきがまわったという訳は、百々村どゞむらくら八と金山かなやままつ江田村えだむら源藏げんぞうが捕まって、己達へ足がついて来たから、すぐに逃げなくっちゃアいけねえぜ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天の安の河原に神集かむつどつどひて、高御産巣日たかみむすびの神の子思金おもひがねの神に思はしめて、常世とこよ長鳴ながなき一〇つどへて鳴かしめて、天の安の河の河上の天の堅石かたしはを取り、天の金山かなやままがねを取りて
東の方は上州太田の金山かなやまが名所でその近傍きんぼう野州やしゅう唐沢山からさわやま辺まで松茸が出るそうですが西は濃州のうしゅう三州江州辺から沢山参ります。それがんな売物屋の手へ入ると西京の松茸と名をつけてしまいます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)