醤油したじ)” の例文
正宗の壜を鉄瓶より抜き出して明るき方へ透して見「大原さん、お醤油したじの中へ白いような雲のようなものがいくつも出来ましたろう。 ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「二進が一進、二進が一進、二一にいち天作の五一三六七八九ぐいちさぶろくななやあここの。」と、饂飩の帳の伸縮のびちぢみは、加減さしひきだけで済むものを、醤油したじに水を割算段。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しゃぶって居ると旨いが、醤油したじッ気が抜けると後はバサ/\して青貝を食って居るような心持で不思議な物で……ねえさん一寸ちょっと此処に居て遊んで
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
米や醤油したじ時買ときがいしなければならぬような日が、三日も四日も二人に続いていた。お島は朝から碌々ろくろく物も食べずに、不思議に今まで助かっていた鶴さん以来の蒲団ふとんかぶってふせっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
外はかば篝火かがり真昼まひるの様に明るい。余等の天幕の前では、地上にかん/\炭火すみびおこして、ブツ/\切りにした山鳥や、尾頭おかしらつきのやまべ醤油したじひたしジュウ/\あぶっては持て、炙っては持て来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「どうも御苦労さま、それから明日はお醤油したじに波の花を……」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
○「蕎麦粉は宜うごぜえやしたろうが、醤油したじが悪かったにちげえねえ、ぷんと来るやつで、此方こっち醤油したじを持ってきたいね」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
辻には——ふかし芋も売るから、その湯気と、烏賊いかを丸焼に醤油したじ芬々ぷんぷんとした香を立てるのと、二条ふたすじの煙が濃淡あいもつれて雨になびく中を抜けて来た。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうですねー、私どもではお吸物に使うのと煮物や掛醤油に使うのと別々にして二色のお醤油したじを買っておきます。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
新吉が出てしまうと、お作は良人おっとにいいつかったことのほか、何の気働きも機転も利かすことが出来なかった。酒の割法わりかたが間違ったり、高い醤油したじを安く売ることなどはめずらしくなかった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それをよく洗ってお醤油したじを半分ほど入れてお酒のかんをするように鉄瓶てつびんの中へ入れてよくお湯を煮立たせておくれ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
……菜大根、茄子なすびなどは料理に醤油したじついえ、だという倹約で、ねぶかにら大蒜にんにく辣薤らっきょうと申す五うんたぐいを、空地あきち中に、植え込んで、塩で弁ずるのでございまして。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
醤油したじが悪いから良い蕎麦の御膳の蒸籠せいろうを取って参れ、それからお汁粉もあつらえてまいれ
好い時分に取出して水の中で紙を取ってよく洗って指で根元から裂いて皿へ入れてそれへお醤油したじ橙酢だいだいずをかけて戴きます、橙がなければゆず醤油でも構いません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この使つかいのついでに、明神の石坂、開化楼裏の、あの切立きったての段を下りた宮本町の横小路に、相馬そうま煎餅せんべい——塩煎餅の、焼方の、醤油したじに、何となくくつわの形の浮出して見える名物がある。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
醤油したじいからうまいねえ、これでね旦那様、江戸の様な旨い味噌で造ったたれを打込ぶちこんで、獣肉屋もゝんじいやの様にぐつ/\れば旨いが、それだけの事はいきません、どうも是では旨くはないが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
別に椎茸しいたけ簾麩すだれぶとを極く細かく切って糸蒟蒻いとごんにゃくと一緒にお味淋やお醤油したじ美味おいしく煮ておきます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それから肉と御飯とをよく混ぜて先刻さっきの湯煮た汁へ味淋やお醤油したじで極く美味しく味をつけて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こうして二時間ほど煮て中の品物がんなよく煮えたと思う時お醤油したじを少し注してまた一時間ほど煮て火からおろすがお醤油はなるべくすくない位に入れないと味がからくなり過ぎて困るよ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)