見廻みま)” の例文
手燭に照して見廻みまわせば、地に帰しけん天に朝しけん、よもやよもやと思いたる下枝は消えてあらざりけり。得三は顛倒てんどうして血眼ちまなこになりぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるに違いないと思っていた僕の帽子はやはりそこにもありませんでした。僕はせかせかした気持ちになって、あっちこちを見廻みまわしました。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
男はこの様子を見て四方あたりをきっと見廻みまわしながら、火鉢越に女の顔近く我顔を出して、極めて低き声ひそひそと
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
きよろ/\しながら四方しほう見廻みまはすと、「」の士官しくわん水兵等すいへいらはくす/\わらつてる、濱島武文はまじまたけぶみはから/\わらつてる、春枝夫人はるえふじん手巾ハンカチーフかげからそつとわらつてる。
余は思わず嗟嘆さたんして見廻みまわした。好い見晴らしだ。武蔵野の此辺では、中々斯程の展望所は無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
或日あるひ自分は何時いつものように滑川なめりがわほとりまで散歩して、さて砂山に登ると、おもいの外、北風が身にしむのでふもとおり其処そこら日あたりのい所、身体からだのばして楽にほんの読めそうな所と四辺あたり見廻みまわしたが
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と幾野捜査課長は、せ集った研究所の一同を見廻みまわしていった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
をさましたら本のつつみはちゃんと枕もとにありましたけれども、帽子はありませんでした。僕は驚いて、半分寝床から起き上って、あっちこっちを見廻みまわしました。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
直ぐ向うのならびが岡の兼好けんこうが書いた遊びずきの法師達が、ちごを連れて落葉にうずめて置いた弁当を探して居やしないか、と見廻みまわしたが、人の影はなくて、唯小鳥のさえずる声ばかりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
海上かいじやうおこる千差萬別さばんべつ事變じへんをば一も見遁みのがすまじきはづその見張番みはりばんいまなにをかすと見廻みまはすと、此時このとき右舷うげん當番たうばん水夫すゐふ木像もくざうごと船首せんしゆかたむかつたまゝ、いまかすか砲聲ほうせいみゝにもらぬ樣子やうす
子犬の生れた騒ぎに、猫のミイやが居ないことを午過ひるすぎまで気付きづかなかった。「おや、ミイは?」と細君さいくんが不安な顔をして見廻みまわした時は、午後の一時近かった。そうがかりで家中探がす。居ない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)