藻草もぐさ)” の例文
(俊寛の姿すがたの見えざるに気づいて、驚き薪を投げる)ご主人様。(小屋の中を捜す。藻草もぐさのかきわけてあるのを見る。急にまっさおになる)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
藻草もぐさが静かに揺れている水の中をのぞくと、ひらたという躯の透明な小さい川蝦かわえびがい、やなぎばえだの、金鮒などがついついと泳ぎまわっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこらの汀に、泥にくるまれた蓑虫みのむしのようなものが無数に見えましょう。虫でも藻草もぐさでもありません。泥魚でいという魚です。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水の中の藻草もぐさの茎をすつかり集めさせて、それでもつて湖水の天井へ一面にあついおほひをつくらせました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
あるものは願望ねがいはあれど希望のぞみなき溜息ためいきをもって、揺動ゆれうごく無数の藻草もぐさのようにゆらゆらとたゆとうておった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
まが方士はうしひげである藻草もぐさした、深淵の底に眠つてゐられる、忘却ばうきやくの花は、その眼のくぼつらぬいて咲いてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
両股りょうもものあたりまで、真っ青な水の中へ浸けて、腹や足一杯に藻草もぐさを絡ませながら、竿を立てていた小作人が、その感触でわかるものでしょう、突然に顔色を変えました。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
三島美人化粧の水の泉源は手頃な池で、藻草もぐさの遊ぶはやの目玉さえ見えるくらい澄んでいる。水底みなそこの砂が彼方此方でムク/\と動いて、大小の菊の花のような形をしている。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ごらんなさい、水底には一面に絹糸をなびかしたような藻草もぐさが生えているではありませんか。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見る見るうち満月が木立を離れるに従い河岸かわぎしの夜露をあびたかわら屋根や、水に湿れた棒杭ぼうぐい、満潮に流れ寄る石垣下の藻草もぐさのちぎれ、船の横腹、竹竿たけざおなぞが、逸早いちはやく月の光を受けてあおく輝き出した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこには花も咲いていず、藻草もぐさも生えていません。
あし藻草もぐさの どこに死骸はかくれてしまつたのか
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
むらがりしづむ藻草もぐさのかげに眼をよせる。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
藻草もぐさが静かに揺れている水の中をのぞくと、ひらたという躯の透明な小さい川蝦かわえびがい、やなぎばやだの、金鮒などがついついと泳ぎまわっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いそに漂着ひょうちゃくしたる丸太や竹をはりけたとし、あしむすんで屋根をき、とまの破片、藻草もぐさ、松葉等を掛けてわずかに雨露あめつゆけたるのみ。すべてとぼしく荒れ果てている。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
草や木に巻きついて、それを片はしから食つてしまふやうな、動物見たいな藻草もぐさだの、それは/\いろ/\さま/″\の大きなお化や小さなお化がうよ/\むらがつて
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
と、彼につづいて十間ほど駈けて行ったが、磯の藻草もぐさに足をからまれて、勢いよく前へ転んだ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、水は清冽せいれつで底の藻草もぐさや小石まで、いて見えるかと疑われるばかり、そして四周を緑濃い山々が取り囲んで、鳴き交う小鳥と空飛ぶ白雲のほかには、訪れるものもない幽邃ゆうすいさです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
見る/\うち満月が木立こだちを離れるに従ひ河岸かはぎし夜露よつゆをあびた瓦屋根かはらやねや、水に湿れた棒杭ぼうぐひ満潮まんてうに流れ寄る石垣下いしがきした藻草もぐさのちぎれ、船の横腹よこはら竹竿たけざをなぞが、逸早いちはやく月の光を受けてあをく輝き出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
弥市はうさん臭そうに、もっと近くへいって川の中をのぞいてみた。水が流れていたし、水の中では藻草もぐさが揺れていた。藻草のないところには流れに研がれたまるい石ころが見えた。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
(よろめきつつ藻草もぐさをかきわけて小屋をいであたりをうかがい浜辺はまべのほうに向かって退場)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
黄昏たそがれの、片明りに光る、水面の下をすかして見ると、青黒く藻草もぐさがゆらめいてい、なにかの稚魚が群れをなして、さっと片方へはしり、すぐにまた片方へさっと走るのが見えた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
黄昏たそがれの、片明りに光る、水面の下をすかして見ると、青黒く藻草もぐさがゆらめいてい、なにかの稚魚が群れをなして、さっと片方へはしり、すぐにまた片方へさっと走るのが見えた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)