茸狩たけがり)” の例文
山時分じゃないから人ッ子にわず。また茸狩たけがりにだって、あんなに奥までくものはない。随分みちでもない処を潜ったからな。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
和泉いづみの山の茸狩たけがりの思ひ出は、十二三の年になりますまで四五年の間は一日も忘れることが出来なかつた程の面白いことでした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
またあちらの松林には茸狩たけがり男女ひとが、白地の手拭てぬぐいを被って、話し合いながらその姿が見えたり、隠れたりしています。
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
妙子たちと一緒に長良川ながらがわ鵜飼うかいへ行った帰りに菅野家へ寄って一泊したことがあり、それから両三年後にも一度、矢張同じ顔触れで、茸狩たけがりに招かれたことがあった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
郷校から程近い平田野へいだのといふ松原、晴れた日曜の茸狩たけがりに、この秋草の香と初茸の香とを嗅ぎ分けつつ、いとけなき自分は、其処の松蔭、此処の松蔭と探し歩いたものであつた。——
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
独照が「うかなすつたのかい。」と訊くと、娘はなまめかしい京言葉で理由わけを話した。それに依ると、娘は中京なかぎやう辺の商人あきんどの一粒種だが、今日店の者大勢と一緒に山へ茸狩たけがりに往つた。
去年と同じ事情のもとに、京都の秋を繰り返す興味に乏しかった宗助は、安井と御米に誘われて茸狩たけがりに行った時、朗らかな空気のうちにまた新らしいにおいを見出した。紅葉もみじも三人で観た。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ついでに、いまの(霜こし)のありそうな処へ案内して、一つでも二つでも取らして下さい、……私は茸狩たけがりが大好き。——
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一筆申上げそうろう、先日は遠路わざわざお越し下され候処田舎のこととて何の風情ふぜい無之これなくまことに失礼つかまつり何卒なにとぞこれにおりなく又この秋には皆様にて茸狩たけがりにおいで下されたくお待ち申上げ候
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其内そのうちまたあきた。去年きよねんおな事情じじやうもとに、京都きやうとあきかへ興味きようみとぼしかつた宗助そうすけは、安井やすゐ御米およねさそはれて茸狩たけがりつたときほがらかな空氣くうきのうちにまたあたらしいにほひ見出みいだした。紅葉もみぢ三人さんにんた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
松葉越まつばごしに見えましょう。あの山は、それ茸狩たけがりだ、彼岸ひがんだ、二十六夜待やまちだ、月見だ、と云って土地の人が遊山ゆさんに行く。あなたも朝夕見ていましょう。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この姉妹達が茸狩たけがりに招かれたのは、幸子が娘時代を送った最後の年の秋のことで、当時既に貞之助との婚約が調っており、その二三箇月後に式を挙げたのであったから、それは大正十四年で
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なつになると納涼すずみだといつてひとる、あき茸狩たけがり出懸でかけてる、遊山ゆさんをするのが、みんなうちはしとほらねばならない。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おもて三の面上段に、絵入りの続きもののあるのを、ぼんやりとたたずんで見ると、さきの運びは分らないが、ちょうど思合った若い男女が、山に茸狩たけがりをする場面である。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)