腹心ふくしん)” の例文
一夜いちや幼君えうくん燈火とうくわもと典籍てんせきひもときて、寂寞せきばくとしておはしたる、御耳おんみゝおどろかして、「きみひそか申上まをしあぐべきことのさふらふ」と御前ごぜん伺候しかうせしは、きみ腹心ふくしん何某なにがしなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大久保石見守長安おおくぼいわみのかみながやすは、家康の腹心ふくしんで、能役者のうやくしゃの子から金座奉行きんざぶぎょう立身りっしんした男、ひじょうに才智さいちにたけ算盤そろばんにたっしている。家康はその石見守を甲府の代官とした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其後そのご幾年月いくねんげつあひだ苦心くしん苦心くしんかさねた結果けつくわ一昨年いつさくねんの十一ぐわつ三十にちわたくし一艘いつそう大帆走船だいほまへせんに、おびたゞしき材料ざいれうと、卅七めい腹心ふくしん部下ぶかとを搭載のせて、はる/″\日本につぽん
かりに其の詞をれて、つらつら経久がなす所を見るに、九六万夫ばんぷゆう人にすぐれ、よく士卒いくさ習練たならすといへども、九七智を用ふるに狐疑こぎの心おほくして、九八腹心ふくしん爪牙さうがの家の子なし。
イヤ美術品はあきらめるとしても、二人の腹心ふくしんの部下が遂に警察の手中におちたのだ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ここに立っている腹心ふくしんの部下で、新たに毒瓦斯発明官に任じました燻精を一週間だけお預けいたしますから、その期間にこの男に対し、新毒瓦斯研究の方針とか企画とか設備とか経費とか
古い文部官僚かんりょうで、こちこちの国家主義者としてその名が通っており、在官中から「興国青年塾」という私塾を腹心ふくしんの教育家に経営させ、退官後は、自らその指導の中心になっている人であった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
腹心ふくしんのものが、多少手柄顔にこう報告した時、平田ひらた氏は少からず驚いたのである。
幽霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたくし一個ひとつ秘密ひみつがある、この秘密ひみつわたくしと、わたくし腹心ふくしんの三十七めい水兵すいへいと、帝國海軍ていこくかいぐん部内ぶない某々ぼう/\有司いうしほかには、たれつてものいのです、また、けつして、もらすまじき秘密ひみつですが
しかし家康は、梅雪がうぬぼれているほど、かれを腹心ふくしんとは信じていない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)