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背向
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そむ
ふりがな文庫
“
背向
(
そむ
)” の例文
違うたもんじゃ違うたもんじゃとギヤマン茶碗や、延寿の刀や、姉妹の妾を見せびらかして吹聴致しているので皆、顔を
背向
(
そむ
)
けている。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
心ありそうに、そうすると直ぐに身を引いたのが、隔ての
葭簀
(
よしず
)
の陰になって、顔を
背向
(
そむ
)
けもしないで、
其処
(
そこ
)
で
向直
(
むきなお
)
ってこっちを見ました。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
弓町
(
ゆみちやう
)
の
方
(
かた
)
より出で来れる一黒影あり、交番の燈火にも顔を
背向
(
そむ
)
けて急ぎ橋を渡りつ、土手に沿うて、トある警視庁官舎の門に没し去れり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
その理由はもちろん薄弱であった。何の
防禦
(
ぼうぎょ
)
にもならないことも
解
(
わか
)
りきっていたが、庸三はわざとその問題には顔を
背向
(
そむ
)
けようとしていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
室に這入つて来る処を一眼見た時、彼は癩病人に逢つた如くハツとして、思はず顔を
背向
(
そむ
)
けた程無気味であつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
▼ もっと見る
徳二郎は急に眞面目な顏をしてこの有樣を見て居たが、忽ち顏を
背向
(
そむ
)
け山の方を見て默つて居る、僕は
暫
(
しばら
)
くして
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
(ワグネル寝衣を著、寝る時被る帽を被り、手に燈を取て登場。ファウスト不機嫌らしく顔を
背向
(
そむ
)
く。)
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
さりとて
軽佻
(
かるはずみ
)
にもなきとりなし、持ち
来
(
きた
)
りし
包
(
つつみ
)
静
(
しずか
)
にひらきて二箱三箱差し
出
(
いだ
)
す
手
(
て
)
つきしおらしさに、花は
余所
(
よそ
)
になりてうつゝなく
覗
(
のぞ
)
き込む
此方
(
こなた
)
の
眼
(
め
)
を避けて
背向
(
そむ
)
くる顔
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ある時彼が縁に
背向
(
そむ
)
けて読書して居ると、
後
(
うしろ
)
に
撞
(
どう
)
と物が落ちた。彼はふりかえって大きな
青大将
(
あおだいしょう
)
を見た。
葺
(
ふ
)
きっぱなしの屋根裏の竹に
絡
(
から
)
んで
衣
(
から
)
を脱ぐ拍子に滑り落ちたのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
耳を
背向
(
そむ
)
けて、明日の自分、あの老女梅野の言葉、お由羅のやさしさ、それを刺せという命令、父、兄、母——そうしたことを、毀れた鏡に写してみているように、途切れ途切れに
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その引き
締
(
しま
)
つた頬を見ると、道助は急いで眼を
背向
(
そむ
)
けて少し速足に歩きだした。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
思ふと一瞬の
目叩
(
またゝ
)
きの間に伊藤は私に
背向
(
そむ
)
いたのであつた。私は
呆
(
あき
)
れた。この時ばかりは私は激憤して伊藤の変節を腹の底から憎んだ。私は心に垣を張つて決して彼をその中に入れなかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
父は顏を
背向
(
そむ
)
けて、「えへん、えへん。」と無理に
空咳
(
からせき
)
をした。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
西宮に叱られて、小万は顔を
背向
(
そむ
)
けながら口をつぐんだ。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
厳めしい警官達も顔を
背向
(
そむ
)
けずにはいられなかった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
お島は「ふむ」と笑って、泣顔を
背向
(
そむ
)
けたが、この女には、自分の気分がわかりそうにも思えなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
冷たい、固い石甃の上に無造作に投出されている……という世にも無残な、おそろしい姿に、顔を
背向
(
そむ
)
けようとして
反向
(
そむ
)
けられないでいる苦悶の表情に外ならなかった。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お花はランプの光
眩
(
まぶ
)
し
気
(
げ
)
に
面
(
かほ
)
を
背向
(
そむ
)
けつ「けれど、其のお嬢様など、お
幸福
(
しあはせ
)
ですわねエ、
其様
(
さう
)
した立派な方なら、
仮令
(
たとひ
)
浮き名が立たうが、
一寸
(
ちつと
)
も男の
耻辱
(
はぢ
)
にもなりや仕ませんもの——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
彼の姿は厭でも彼女の視線の中に入らねばならなかつたのだ。道助は仕方なく微笑んだ。それを認めたのか認めないのか彼女は無表情な顔をついと
背向
(
そむ
)
けたまゝ格子戸の中へ消えてしまつた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
支倉は恐怖の色を現わして顔を
背向
(
そむ
)
けようとした。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ファウスト(顔を
背向
(
そむ
)
く。)
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
と顔を
背向
(
そむ
)
ける。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不快な顔を
背向
(
そむ
)
け合っていることが、幾日も続いた。笹村はそのまま病院へ行こうともしないでいる妻の無精を時々笑ったが、お銀はさほど気にもしないらしかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
雨にたたかれ風に
晒
(
さら
)
され。雪や氷に消え入るばっかり。そんな地獄をこの世に作った。丸い明るい天道様まで。クルリクルリと顔をば
背向
(
そむ
)
けて。俺は知らぬと云うたか云わぬか。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
老人は声曇らせて月影に
面
(
おもて
)
を
背向
(
そむ
)
けぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
葉子は息も絶えそうに
呻吟
(
うめ
)
いていたが、
面
(
おもて
)
を
背向
(
そむ
)
けていた庸三が身をひいた時には、すでに
創口
(
きずぐち
)
が消毒されていた。やがて
沃度
(
ヨード
)
ホルムの
臭
(
にお
)
いがして、ガアゼが当てられた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
間もなくその陳列室へ這入って来た一人の生徒が、偶然にも
背後
(
うしろ
)
を振り返った視線がピッタリとMの視線と行き合ったのであったが、その時にMは、吾ともなく視線を
背向
(
そむ
)
けずにはおられなかった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「私はあんなのッぺりしたような人嫌いですよ。」と、お庄は顔を
背向
(
そむ
)
けながら言った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
二人はそのころ、不快な顔を
背向
(
そむ
)
け合っているようなことが幾日も続いていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
醜い涙顔に冷やかな目を
背向
(
そむ
)
けるとは反対に、彼は瞬間葉子を見直した。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
若林は「ふむ」と顔を
背向
(
そむ
)
けていたが、女にくれてやったものまで取り返すほど行き詰まっているわけでもなく、一旦持って帰りはしたものの、四五日すると、お前の
智慧
(
ちえ
)
ではあるまいと言って
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「自分に弱味があるからでしょう」お島は涙ぐんだ
面
(
おもて
)
を
背向
(
そむ
)
けた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
わざと顔を
背向
(
そむ
)
けたりするのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
背
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“背”で始まる語句
背後
背
背負
背中
背丈
背戸
背嚢
背景
背馳
背広