聲音こわね)” の例文
新字:声音
皆低いけれど、澄んだ聲音こわねで話してゐた。後になつて私はその人たちの名前を知つたが、今そのことを述べておいた方がいゝだらう。
われはサンタの艶色を憶ひ起して、心目にその燃ゆる如きなざしを見心耳にその渇せる如き聲音こわねを聞き、我と我を嘲り我と我をいやしめり。
ロミオ や、おれぶは戀人こひゞとぢゃ。あゝ、戀人こひゞとよる聲音こわねは、白銀しろがねすゞのやうにやさしうて、けばくほどなつかしい!
むねこたへた、爾時そのとき物凄ものすご聲音こわねそろへて、わあといつた、わあといつてわらひつけたなんともたのみない、たとへやうのないこゑが、天窓あたまからわたし引抱ひつかゝへたやうにおもつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
主命しゆうめいりて糸子いとこ縁談えんだんの申しこみなるべし、其時そのとき雪三せつざう决然けつぜんとせし聲音こわねにて、折角せつかく御懇望ごこんもうながら糸子いとこさま御儀おんぎ他家たけしたまふ御身おんみならねばおこゝろうけたまはるまでもなし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小菊は別に私を恨む樣子もなく、然しまるで昔の人ではないやうな、沈着おちついた聲音こわねになつて
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
主人の宗左衞門の後添でお源といふ四十七八の内儀——まだ女の美しさが身振りにも聲音こわねにも殘る中婆さん、大柄でガラガラして、商賣人あがりらしい匂ひが何處かに殘るのを筆頭に
聲音こわねもかくいと熱くさそひなせば
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
なつかしき母の聲音こわねか。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
彼女はやさしい聲音こわねで僕に語る——あなたが實にうまうつしとつたあの眼で凝と僕を見下して——その珊瑚さんごのやうな唇で、僕に微笑ほゝゑみかける。
ロレ 冥加みゃうがあらせたまへ! れぢゃ、この早朝さうてうに、なつかしいその聲音こわねは? ほう、わかくせ早起はやおきは、こゝろ煩悶わづらひのある證據しょうこぢゃ。
その聲音こわね尋常よのつねならず、譬へば泉下の人の假に形を現して物言ふが如くなりき。我即興詩はみだりに混沌のあな穿うがちて、少女に宇宙の美を教へき。
その聲音こわねこそすみわたる
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「さあ、誰でせう?」と彼女は、私が半ば思ひ出しかけてゐる聲音こわねと微笑でいた。「まさか、すつかりお忘れになつたのぢやないでせうねえ、ジエィンさん?」
チッバ あの聲音こわねはモンタギューやつ相違さうゐない。……(從者に對ひ)細刃劍ほそみて。
調しらべ清き樂に似たる聲音こわねに、人々これぞ神のみつかひなるべき、とさゝやきぬ。