紅燈こうとう)” の例文
新字:紅灯
る/\うちあやしふね白色檣燈はくしよくしやうとう弦月丸げんげつまる檣燈しやうとう並行へいかうになつた——や、彼方かなた右舷うげん緑燈りよくとう左舷さげん紅燈こうとう尻眼しりめにかけて
七切通ななきりどおしの安手な娼家しょうかから一流どこの茶屋、白拍子の家までが、夜ごと、やけくそな武人の遊興に紅燈こうとうをただらしていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳橋の裏河岸うらがしに、大代地おおだいじに、大川の水にゆらぐ紅燈こうとうは、幾多の遊人の魂をゆるがすに、この露路裏の黒暗くらやみは、彼女の疲労つかれのように重く暗くおどんでいる。
その他、彼の金力が物をうところは、いたところにあった。緑酒紅燈こうとうちまたでも、彼は自分の金の力が万能であったのを知った。彼は、金さえあれば、何でも出来ると思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
我が家に近き町はずれよりは、のきごとに紅燈こうとうの影美しく飾られて宛然さながら敷地祭礼の如くなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
散歩のたのしみ、旅行の楽、能楽演劇を見る楽、寄席に行く楽、見せ物興行物を見る楽、展覧会を見る楽、花見月見雪見等に行く楽、細君を携へて湯治とうじに行く楽、紅燈こうとう緑酒りょくしゅ美人の膝を枕にする楽
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
左舷さげん紅燈こうとう海上法かいじやうはふまもり、停泊とゞまれるふね大鳥おほとり波上はじやうねむるにて、丁度ちやうどゆめにでもありさう景色けしき! わたくし此樣こん風景ふうけい今迄いまゝで幾回いくくわいともなくながめたが
金モールの戎服じゅうふくに、二頭立ての馬車を駆り、文明開化の風をきって、議事堂の帰りを、築地つきじホテル館へ廻り、ホテル館のくずれは、新柳しんりゅう二橋(新橋と柳橋)の紅燈こうとうを必ずさわがして夜を徹した。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此方こなた滊角きかく短聲たんせい一發いつぱつ鍼路しんろ右舷うげんれば、彼方かなた海蛇丸かいだまる左舷さげん紅燈こうとうかくれて鍼路しんろみぎり、此方こなた短聲たんせい二發にぱつ鍼路しんろ左舷さげんめぐらせば、彼方かなた左舷さげん紅燈こうとうあらはれて鍼路しんろひだりる。
君立ち川の紅燈こうとうや人影は、まだ宵のような柳がくれのそよめきだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
興に浮いた人々の勢いはまない。誰がいい出したか須賀口すがぐちへ押しせようではないかという。須賀口とは清洲の宿駅でいちばん明るい紅燈こうとうちまたである。否というような理性家は一人もいそうもない。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)