破落戸ごろつき)” の例文
破落戸ごろつき仲間に遣る物を遣らねば此納まりむづかしく、我れは詮方なけれどお名前に申わけなしなどゝ、つまりは此金これの欲しと聞えぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ここいらは廓外くるわそとで、お物見下のような処だから、いや遣手やりてだわ、新造しんぞだわ、その妹だわ、破落戸ごろつきの兄貴だわ、口入宿くちいれやどだわ、慶庵だわ
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅芸人に因縁いんねんをつけたがる雲助や破落戸ごろつきの類が、こわかおをしてやって来た時にムクがいて、じっとその面を見ながら傍へ寄って行くと
……畜生ちくしゃう兩方りゃうはう奴等やつらめ!……うぬ! いぬねずみ鼷鼠はつかねずみ猫股ねこまた人間にんげん引掻ひっかいてころしをる! 一二三ひふうみいけん使つか駄法螺吹家だぼらふきめ! 破落戸ごろつき
所謂いわゆる遊侠の世界(すなわち親分と称せられる人々から、破落戸ごろつきと称せられる人々)——あらゆる方面に知己があり友人があった。
名古屋の小酒井不木氏 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕は、チチコフの買った農奴が大泥坊で、しようのない飲んだくれで、手のつけられない破落戸ごろつきでなかったら、この首を賭けてもいいねえ。
ツァウォツキイは今一人の破落戸ごろつきとヘルミイネンウェヒの裏の溝端どぶばた骨牌かるたをしていた。そのうち暗くなって骨牌が見分けられないようになった。
「己は鶏三羽と山羊やぎ一疋遣ったに己の児を捉えくさった、この上まだ何ぞ欲しいか破落戸ごろつきめ」とわめきおったと(バルフォール『印度事彙』三)。
或は築港事業に藉口して破落戸ごろつきを豢養し、或は学校統一を名儀として、市費を貪婪の手に糜せんとす、彼等姦徒醜類の汚行、一々之を記するにたへず。
自由の使徒・島田三郎 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
動物にたいする憐愍れんびんの欠乏は勿論、仕えの女たちへのしばしばの乱行もそうなら、わんをもって酒食らうことも殆ど町方破落戸ごろつきとえらぶところがなかった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
また百姓はこういう目をしなければいけない、破落戸ごろつきはこういう手つき、職人はここへこう手を置くものだ、それから侍は肩をいからして手をこう置くし
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
相手がたとえ破落戸ごろつきにもせよ、不義があったと申す以上、はきとした申しわけが立たねばならぬ、おちついて、よく思案したうえ、あかしがあれば立ててみせよ
明暗嫁問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼は破落戸ごろつきのオブリアンが、マーガレットに何か合図でもしはしないかと時々刻々そればかり気にしていた。
そうなって参ると猶更になまけるようになって世の中の稼いで暮すと申す活業なりわいに逆らってゆくもので、到頭破落戸ごろつき仲間へおち、良くない悪法ばかりやっております。
簾藤すどうへ転じてからこの気風がまるで変ってしまった。服装なりも書生風よりはむしろ破落戸ごろつき——というと語弊があるが、同じ書生風でも堕落書生というような気味合があった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
頸を締めるといふのは、人間の呼吸いきの根を止めることだ。殺人未遂だ。おれは、あいつから、殺される覚えはない。これでも親友だ。畜生つ! 破落戸ごろつき! 暴力団! 鬼熊おにくま
長閑なる反目 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
訪ねてくる友人連がまた、みんな破落戸ごろつきみたいな者ばかりだった。そして、やれ洋食だのとりだの牛肉だのと、さんざん贅沢なことを云っといて、月末には五円しか金を払わなかった。
変な男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
文身ほりものだらけの町の破落戸ごろつきと緒方の書生ばかりが得意の定客じょうきゃくだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それに奥様のお兄様だとかいう破落戸ごろつきのような風儀ふうの悪い、弁太とかいう男が出入りをしては、ずっと以前から、奥様の手から、いろいろの無心を
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この罰あたりめが! 顔でも洗つて出直して来やあがれ! しやうのない破落戸ごろつき野郎め! てめえのお袋を見たことはないが、どうせ碌でなしに違ひない。
それを見込みて石之助、今宵を期限の借金が御座る、人の受けに立ちて判をたるもあれば、花見のむしろに狂風一陣、破落戸ごろつき仲間に遣る物を遣らねばこの納まりむづかしく
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのうち親方もしくじり、破落戸ごろつきとなったから、根岸の寮へ参るどころか足ぶみもならない。もう斯うなっては手蔓てづるが切れて顔を拝むことも出来ませんので、よんどころなく諦めて仕舞いました。
村方むらかたの方から驀然まっしぐらにこの古市の町へ走り込んだムクのあとを追いかけて来るのが何十人という人、得物えものを持ち、石や瓦を抱えている。前には役人連、そのあとから番太ばんた破落戸ごろつき、弥次馬のたぐいが続く。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
民弥の歓喜に引きかえて、今は三十郎は絶体絶命、見れば非人も三人の破落戸ごろつきも、いつの間に逃げたか姿はなかった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あれだよ、この人には、ただもう、呑助か破落戸ごろつきでさへありやあ性に合ふんだからね。
「ご両所であったか、ご助勢感謝! こやつらは悪漢で破落戸ごろつきでござる! 切って切って切りまくりくだされ!」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その他いろんな街道筋の破落戸ごろつきどものためにさんざん悩まされた挙句、やっとのことで旅人の眼に、自分を出迎えにこちらへ近寄って来るような、懐かしい我が家の灯影がうつりだす——と
得物得物を振りかざしてこちらへ走って来るではないか! 香具師やし博徒ばくと、遊芸人、破落戸ごろつきたちの群れであった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「猪之助? おお猪之助が。……あの破落戸ごろつきが! 執念深い! ……兄の悪口を云っていたであろうな」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
民弥は非人や破落戸ごろつきに囲まれ、棒や竹キレで打ってかかられ、進退きわまり仰天したが
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、そこにはずっと昼間から、三人ほどの破落戸ごろつきらしい、風の悪い男が三人いて、街道ごしの吉野屋の門口へ、絶えず視線を送っていたが、三十郎の姿を見ると、一斉にヒョコリと辞儀をした。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
井戸ではなくて間道だったのさ。こいつ面白いと思ったので梯子を伝わって下りたものさ。すると底に女がいた。それから五人の男がいた。六部と破落戸ごろつき売卜者ばいぼくしゃと、武士さむらいと坊主とがいたってわけだ。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)