眼中がんちう)” の例文
しくば明後日追放つゐはうの場所へいたり對面すべしかならず御府内にて麁相そさうなる儀いたすこと勿れとて下られけるに忠八は思はず眼中がんちうなみだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此教育は情意行為の標準を、自己以外の遠い所に据ゑて、事実の発展によつて証明せらるべき手近てぢかまことを、眼中がんちうに置かない無理なものであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
武村兵曹たけむらへいそう眼中がんちう無念むねんなみだうかべて、いま多少たせう仇浪あだなみ立騷たちさわいで海面かいめんにらんでる。日出雄少年ひでをせうねんはいと/\かなさう
心掛候に付きへだて候へども伊豆守御役宅に於て天一坊樣御面部をひそかに拜し奉りしに御目とほゝの間に凶相きようさうあり存外ぞんぐわいなるたくみあるの相にて又眼中がんちう赤筋あかすぢあつひとみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ことに、ある時、ある場合に、舞台の真中まんなかに立つて、手をひろげて見たり、そらにらんで見たりするときは、観客の眼中がんちうほかのものは一切入り込む余地のない位強烈な刺激を与へる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
隨分ずいぶん無謀むぼうことだ、今頃いまごろからかゝ深林しんりんむかつて探險たんけんするのは、けれどけうじやうじたる吾等われら眼中がんちうには、むかところてきなしといふいきほひで、二三すゝんで、その深林しんりんやうや間近まぢかになつた時分じぶんまつたれた。
とくと拜見候處御面相ごめんさう甚だよろしからず第一に目とほゝとのあひだ凶相きようさう現はる是は存外の謀計はかりごとくはだつる相にてまた眼中がんちう殺伐さつばつの氣あり是は人をがいしたる相貌さうばうなり且眼中に赤きすぢありて此筋このすぢひとみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)