率爾そつじ)” の例文
彼はややき込みながら、「率爾そつじながら、少々ものを尋ねるが、その出家と申すは、年の頃はどれぐらいじゃ」と、きいた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「場所がらをも弁えず、まことに率爾そつじではござりまするが、事火急のお願い、何とぞお聞き届け願わしゅう存じまする……」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あいつがこう乙な声を出して、率爾そつじながらしばしお待ちを願う、お呼びとめありしはそれがしか——なんてことになると面白えんだがなあ。仇敵討かたきうちだぜ、きっと
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
子路率爾そつじとしてこたえて曰く、千乗の国大国の間にはさまりて加うるに師旅しりょを以てしかさぬるに饑饉ききんを以てせんとき、ゆうこれをおさめば、三年に及ばんころ、勇ありみちを知らしめん。夫子之をわらう。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
これらの歌多くは事に逢ふて率爾そつじに作りし者なるべく文字の排列はいれつなどには注意せざりしがために歌としては善きも悪きもあれどとにかく天真爛漫てんしんらんまんなる処に元義の人物性情は躍如やくじょとしてあらはれ居るを
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
率爾そつじながらそこへ参られたは、お武家かそれとも土地のお方か?」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
休めて扨老女に打對ひ率爾そつじながら此處は何といふ所にて東海道の宿迄は道法みちのり何程是有やと尋ぬるに老女は答へて此處は大野の在にて街道かいだう迄は二里餘りも有ぬべし只今承まはれば御連おつれを見失ひ此所迄後を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんならあの率爾そつじな火の戯を御勘弁下さいますか。
率爾そつじながら、ちとものを、ちとものを。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ではまだ、ずっと東の方の道よな。さもあろう、女子おなごめしいづれの足では。……いや、率爾そつじを申した。御免」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つうじければ大隅守殿早速對面あり此時越前守には率爾そつじながら早速伺ひ申度は今より廿三年以前の御召使めしつかひにさはと申女中の御座候ひしやときくに大隅守殿申さるゝは親將監三年以前に病死びやうし致し私し家督仕つり候へども當年廿五歳なれば廿三年あとの事は一かうわきまへ申さずと答へらる越前守推返おしかへして然らば御母公ぼこうには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
挨拶として率爾そつじはないが、噛んでも味のない辞令じれい一片である。石川数正もそうだったが、総じてここの家中には一種特別な家風がげんとしてあるやに感じられる。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そゝぎ掛け忠兵衞なれば恍惚みとれもせず其儘おくへ入たればよくは見ねども一寸ちよつとるさへ比ひまれなる美婦人と思へばうちの若旦那が見染みそめて思ひなやむ道理だうり要こそあれと主個あるじに向ひチト率爾そつじなるお願ひにて申し出すも出しにくきが吾儕わたくしは本町三丁目小西屋長左衞門こにしやちやうざゑもん方の管伴ばんたうにて忠兵衞と申す者なるが今日出番かた/″\にて御覽ごらんの通り丁稚こぞう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ほまれある御裔とも思いもよらず、さきほどからの率爾そつじはゆるせ。盃をとらそう。下野とやら」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「男には分らん。分らんものを、見当違いな率爾そつじであったら、ごかんべんを願いたい」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
率爾そつじを謝して、あわてて奥へはいって行った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは、率爾そつじを」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)