かはうそ)” の例文
車夫のかく答へし後はことば絶えて、車は驀直ましぐらに走れり、紳士は二重外套にじゆうがいとうそでひし掻合かきあはせて、かはうそ衿皮えりかはの内に耳より深くおもてうづめたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
また闇の夜などに、川や沼に大高浪押し来り、小胆の人は大蛇かと驚きましたが、かはうそが多く子を連れて、游ぎあるくのでござりました。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ところがそれからまた二日ふつかいて、三日目みつかめがたに、かはうそえりいたあたゝかさうな外套マントて、突然とつぜん坂井さかゐ宗助そうすけところつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かはうその皮を剥がない。ずつと以前、北の山々から鋭い風が鵝毛の樣な雪片を運んで來て以來、誰か、シャクが村の仕事をするのを見た者があるか?
狐憑 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
ゲエルの説明する所によれば、河童はいつもかはうそを仮設敵にしてゐると云ふことです。しかも獺は河童に負けない軍備を具へてゐると云ふことです。
河童 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かたともみづうみともえた……むし寂然せきぜんとしてしづんだいろは、おほいなる古沼ふるぬまか、千年ちとせ百年もゝとせものいはぬしづかなふちかとおもはれた圓山川まるやまがは川裾かはすそには——河童かつぱか、かはうそは?……などとかうものなら、はてね
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かはうそア 車に
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
つぎ宗助そうすけ役所やくしよかへりがけに、電車でんしやりて横町よこちやう道具屋だうぐやまへまでると、れいかはうそえりけた坂井さかゐ外套ぐわいたう一寸ちよつといた。横顏よこがほ徃來わうらいはうけて、主人しゆじん相手あひてなにつてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きつね豆府屋とうふやたぬき酒屋さかやかはうそ鰯賣いわしこも、薄日うすびにそのなかとほつたのである。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしかはうそのやうに、ごろんとた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)