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物蔭
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ものかげ
ふりがな文庫
“
物蔭
(
ものかげ
)” の例文
このごろは大臣の夫人の内親王様も中将を快くお思いにならなくなったのに悲観して、今日も仲間から離れて
物蔭
(
ものかげ
)
で横になっていた。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
平次は八五郎を突飛ばすやうに、あわてて
物蔭
(
ものかげ
)
に身を
潜
(
ひそ
)
めました。裏口が靜かに開いて、眞つ黒なものが、そろりと外へ出たのです。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と云ううちに交通巡査も、
物蔭
(
ものかげ
)
に隠しておいた自働自転車を引ずり出して飛乗った。爆音を
蹴散
(
けち
)
らして
箱自動車
(
セダン
)
の跡を追った。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は毎朝この青年の立派な姿を見るたびに、何ともいわれぬ
羨
(
うらや
)
ましさと、また身の
羞
(
はず
)
かしさとを覚えて、
野鼠
(
のねずみ
)
のように
物蔭
(
ものかげ
)
にかくれるのが常であった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
持
(
も
)
ち
主
(
ぬし
)
は、いまくるか、いまくるかと、
物蔭
(
ものかげ
)
に
隠
(
かく
)
れて、
見張
(
みは
)
っていますと、
太郎
(
たろう
)
は、
高
(
たか
)
い
竹馬
(
たけうま
)
に
乗
(
の
)
ってあとからおおぜいの
子供
(
こども
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れてやってきました。
竹馬の太郎
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
どこかの
隅
(
すみ
)
に
縮
(
ちぢ
)
こまっていて、彼はそいつが通るのを待ち
構
(
かま
)
えている。あらかじめこれという当てもなく、彼は耳を澄まし、いざという場合に、
物蔭
(
ものかげ
)
から現われ出ようというのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
何のために磯五についてそんな
物蔭
(
ものかげ
)
まで来てしまったのか、自分でもわからない気がしたが、そこなら、ちょっとした木立ちにさえぎられて、勝手口からも店のほうからも見えないし
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
のちの
験
(
しるし
)
にせばやと思いてその髪をいささか切り取り、これを
綰
(
わが
)
ねて
懐
(
ふところ
)
に入れ、やがて家路に向いしに、道の程にて
耐
(
た
)
えがたく睡眠を
催
(
もよお
)
しければ、しばらく
物蔭
(
ものかげ
)
に立寄りてまどろみたり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ばらっと、
物蔭
(
ものかげ
)
をとび出した源次郎は、不意に、二人の前にあらわれて
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
中の君はそっと
物蔭
(
ものかげ
)
へ隠れてしまったのであったから、ただ一人床上に横たわっている
総角
(
あげまき
)
の病女王のそばへ寄って薫は
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
母
(
はは
)
ねこは、
子
(
こ
)
ねこをなめて、いたわりました。そして
今度
(
こんど
)
は、
子供
(
こども
)
のあるお
家
(
うち
)
へつれてきました。やはり
自分
(
じぶん
)
は、
物蔭
(
ものかげ
)
に
隠
(
かく
)
れて、ようすをうかがっていました。
ねこ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
先刻
(
さっき
)
、船を上った時から、絶えず
物蔭
(
ものかげ
)
から物蔭を伝わって
尾
(
つ
)
けて来た
旅合羽
(
たびがっぱ
)
の男が、するりと、側へ、からむように寄り付いて来たかと思うと、いきなり、合羽の下に潜ませていた
匕首
(
あいくち
)
を向けて
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次はそれを縛らうとする寅吉を無理に
物蔭
(
ものかげ
)
に連れて行つて
銭形平次捕物控:153 荒神箒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
少将がくつろいでいる昼ごろに今では
守
(
かみ
)
の愛嬢の
居室
(
いま
)
に使われている西座敷へ来て夫人は
物蔭
(
ものかげ
)
からのぞいた。
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「さあ、おまえは、あの
奥
(
おく
)
さまのそばへいってごらん。」といって、
母
(
はは
)
ねこは、
子
(
こ
)
ねこを
家
(
いえ
)
の
中
(
なか
)
へ
入
(
い
)
れて、
自分
(
じぶん
)
は、
物蔭
(
ものかげ
)
に
隠
(
かく
)
れて、ようすをうかがっていました。
ねこ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
で——立ち際に内蔵助は、
物蔭
(
ものかげ
)
へ、主税を呼んで、そっと云った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
日
(
にち
)
、
白
(
しろ
)
い
犬
(
いぬ
)
がきて、ねこのご
飯
(
はん
)
を
食
(
た
)
べていました。それを
子供
(
こども
)
たちは
見
(
み
)
つけました。
白
(
しろ
)
い
犬
(
いぬ
)
は、すぐに
物蔭
(
ものかげ
)
に
隠
(
かく
)
れてしまったが、
子供
(
こども
)
たちは、ねこを
捕
(
と
)
らえて
小ねこはなにを知ったか
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しばらく
物蔭
(
ものかげ
)
に隠れてお聞きしていたいと思うが、そんな場所はあるだろうか。
源氏物語:47 橋姫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
物蔭
(
ものかげ
)
から、このようすを
見
(
み
)
ていた
魚
(
うお
)
がありました。その
魚
(
うお
)
たちは、
小
(
ちい
)
さな
声
(
こえ
)
でささやいたのでした。
なまずとあざみの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
木立
(
こだち
)
も、
眠
(
ねむ
)
っていれば、
山
(
やま
)
にすんでいる
獣
(
けもの
)
は、
穴
(
あな
)
にはいって
眠
(
ねむ
)
っているであろうし、
水
(
みず
)
の
中
(
なか
)
にすんでいる
魚
(
さかな
)
は、なにかの
物蔭
(
ものかげ
)
にすくんで、じっとしているにちがいない。
ある夜の星たちの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
蔭
漢検準1級
部首:⾋
14画
“物”で始まる語句
物
物凄
物語
物憂
物識
物怪
物騒
物置
物音
物思