物干ものほ)” の例文
ゆうちゃんは、それから毎晩まいばんのように物干ものほだいがって、あおよるそらをながめながら、たかやまや、少年しょうねんのことをおもしていました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
通りはいよいよせまくなって、こちらのうちから向こうのうちへ物干ものほしのつなが下がって、きたならしいぼろがかけてあった。
剣は三尺に足らずといえども物干ものほ竿ざおより勝りましょう。お館には勿体ないものに美々びびしい衣裳を着せてお用いではある
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は寝間着ねまきのまま、屋根から隣りの家い逃げて物干ものほしの床の下いもぐり込んでた。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もし夜中よなかそとで、ねこねことけんかでもしていますと、ばあさんはきてて、物干ものほしざおをってきて、ねこがけんかをしていているほうへゆきました。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
起てざる者は倒れ、薄傷うすでの者は戸を蹴って外へ逃げ出しますと、存分に彼等を痛めつけた一方の影は、二階の梯子をふんでヒラリと物干ものほしへ飛び出しました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あしもとには、ちいさな家屋かおくがたてこんで、物干ものほしの洗濯物せんたくものが、夏空なつぞらしたで、かぜにひるがえり、すこしばかりので、子供こどもが、おにごっこをしてあそんでいました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
物干ものほ竿ざおで追い廻された猫のように、逃げ口の度を失ッて、あッちこッちを駆け廻ッておりましたが、例の馬春堂が封じられた暗剣殺の建物のうしろまで来ますと
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正二しょうじは、勝手かってもとへいって、なが物干ものほしざおをって、うらほうへまわりました。にわにはごろから、おじいさんの大事だいじにしている植木鉢うえきばちが、たなのうえならべてありました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
窓いっぱいに銀河あまのがわだ。その星の色を吹きこぼすような風が、秋のあわただしさを跫音にもって、灯のない部屋の二つの寝顔をでて通りぬける。裏の物干ものほしで干し物竿ざおが、からからと鳴る。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうかしてのつくように。」と、ゆうちゃんはたか物干ものほだいうえに、こけももとうめばちそうのはちってきておいたのです。あおあおよるそらは、とおく、きたほうれかかっていました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
同じように物干ものほしへ飛び上がろうとした時、ふと、星明りに描かれた相手の姿をきっと見ますと、彼はお粂のものらしい黒ッぽい単衣ひとえを頭からかぶっていて、いきなり右手の大刀を稲吉の方へ向け
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けるのをって、物干ものほだいがってみますと、なんとしても、だますことはできなく、うめばちそうのしろはなあたまれ、こけもものこまかいうつくしい幾分いくぶんばんでいるのです。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
「今、二階の物干ものほしから、たしかに見えていたんだ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)