煙筒えんとう)” の例文
六千四百とん巨船きよせんもすでになかばかたむき、二本にほん煙筒えんとうから眞黒まつくろ吐出はきだけぶりは、あたか斷末魔だんまつま苦悶くもんうつたへてるかのやうである。
煙筒えんとうから煙が出ている。マストだのタラップだの、それはぼくら横浜の子供は朝夕に見つけている港内の汽船みたいだが、船首と船尾に大砲を附けることを忘れていない。
もっと深川小名木川ふかがわおなぎがわから猿江さるえあたりの工場町こうじょうまちは、工場の建築と無数の煙筒えんとうから吐く煤烟と絶間なき機械の震動とによりて、やや西洋風なる余裕なき悲惨なる光景を呈しきたったが
台所か居間かにすわりきりだった。居間からは煙筒えんとう越しに、病院の庭の木のこずえが見えた。書物を読むでもなく、働こうとばかりした。頭がぼんやりし、退屈し、退屈のあまりに涙を流した。
わたくしいま二本にほん煙筒えんとう二本にほんマスト不思議ふしぎなるふねて、神經しんけい作用さようかはらぬがふとおもうかんだこのはなししかの老水夫らうすゐふげん眞實まことならば、此樣こんふねではあるまいか、その海賊船かいぞくせんといふのは
いそがしき世は製造所の煙筒えんとう叢立むらだつ都市の一隅に当ってかつては時鳥ほととぎす鳴きあしの葉ささやき白魚しらうおひらめ桜花おうか雪と散りたる美しきながれのあった事をも忘れ果ててしまう時、せめてはわが小さきこの著作をして
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ほん煙筒えんとうに四ほんマストすこぶ巨大きよだいふねである、此度このたび支那シナおよ日本につぽん各港かくかうむかつての航海こうかいには、おびたゞしき鐵材てつざいと、黄金わうごん眞珠等しんじゆなどすくなからざる貴重品きちやうひん搭載たうさいしてさうで、その船脚ふなあし餘程よほどふかしづんでえた。