ざら)” の例文
「はっきり分かれば治るんですって? よし! おれが行って話してやる。はっきりと、何もかも話してやる。洗いざらい話してやる」
猟奇の街 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
実際ね、先生にとっ捕まっちゃ百年目。この世に有りとあらゆる悪事の総ざらいをされるんだから、たいがいゆだってしまうのです。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お鳥は来た晩から、洗いざらい身の上ばなしを始めた。向島の妾宅のこと、これまでにわたりあるいた家のことなども、明けッ放しに話した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かなり大きな洋品店でも奥の方から一々持ち出す模様はなく、洗いざらい店に並べて、一ツ残らず名刺型の紙に洋数字を書いてくっつけている。
三千代が無暗むやみに洗いざら饒舌しゃべり散らす女ではなし、よしんばどうして、そんな金が要る様になったかの事情を、詳しく聞き得たにしたところで
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くんちゃんはあたしとおみき徳久利どっくりのように、長唄のおつきあいざらいにお師匠さんに連れてかれた少女ひとだから、そのうちに書かなければならない。
モイセイカは今日けふ院長ゐんちやうのゐるために、ニキタが遠慮ゑんりよしてなに取返とりかへさぬので、もらつて雜物ざふもつを、自分じぶん寐臺ねだいうへあらざらひろげて、一つ/\ならはじめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ところが、その相手は資産目あての結婚であったため、死後彼のものは洗いざらい里方に持って行かれたという。
(新字新仮名) / 原民喜(著)
その日は私の持ちものの最後を洗いざらい持たせてやって、金に代えさせ、珪次を存分に御馳走してやりました。
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あらいざらいぶちまけてやると、そう心に誓ったじゃないかね! それなのに、今になって、ああしたら、こうしたら——なぞと、迷っているこたあありゃあしない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
思ひ起すと、二人が床に這入つてから、洗ひざらひ云つてしまつたのである。東京から妾が來て、けふ、あすのうちに入院する。その妾は置き去りにするかも分らない。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
何よりも幸子の恐れるのは、雪子の縁談が持ち上る度に、興信所などが此方の身元調べをするので、そんな機会に妙子の昨今の行状が洗いざらい世間へ知れることであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
初めに己が洗いざら饒舌しゃべってしまって、それから向うが話し出した。まるでずっと昔から知り合っているなかのように、極親密に話したのだ。子供の時の事も聞いたし、双親ふたおやの事も聞いた。
「君は何も彼も知っているから、洗いざらいに喋るに定っている」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
モイセイカは今日きょう院長いんちょうのいるために、ニキタが遠慮えんりょしてなに取返とりかえさぬので、もらって雑物ぞうもつを、自分じぶん寝台ねだいうえあらざらひろげて、一つ一つならはじめる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
庸三の認識不足から、二人のあいだに大きな錯誤のあること、彼女自身の立場のますます苦しいことを、葉子が洗いざらい一夜泣きながら訴えたことが、春日の容子ようすでも大体庸三に想像できた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
こう云う御坊っちゃんに、洗いざらい自分の弱点を打ち明けては、いたずらに馬糞まぐそを投げて、御嬢さまを驚ろかせると同結果に陥いりやすい。余計な事をして愛想を尽かされるよりは黙っている方が安全だ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かう云ふ御坊つちやんに、あらざらひ自分の弱点をけては、いたづらに馬糞まぐそげて、御嬢さまを驚ろかせると同結果に陥いり易い。余計な事をして愛想あいそかされるよりはだまつてゐる方が安全だ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三千代が無暗にあらざら嘵舌しやべらす女ではなし、よしんばうして、そんなかねる様になつたかの事情を、詳しくき得たにした所で、夫婦ふうふはらなかなんぞは容易にさぐられる訳のものではない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)