らい)” の例文
旧字:
らい了戒りょうかいのあざやかなかね色が、静かに、そして鋭く、眼光刀光が一すじになって詰め寄ろうとしています——平手ひらて青眼せいがんのかたちに。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荒木又右衛門保和、時に三十七、らい伊賀守いがのかみ金道きんみち厚重あつがさねの一刀、※元はばきもとで一寸長さ二尺七寸という強刀、斬られても撲られても、助かりっこのない代物である。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
四五日らいの強行軍と、食糧不足のために、綿のように、疲れ切った皆の頭脳あたまに、この近くなるにれて激しくなる銃声を聞いて、引き締まるような緊張味を感じて
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
東京市中や市外の要所々々にも歩哨ほしょうが立ち、暴徒しゅうらい等の流言にびくびくしていた人たちもすっかり安神あんしんしましたし、混雑につけ入って色んな勝手なことをしがちな
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その中にヒマラヤ天文台は過日らいの報告よりも更に驚愕すべき報道を発した。左の如くに
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
当行学院御院主、昨秋らい関東御巡錫中ごじゅんしゃくちゅうの故を以て、その留守を預かる院代いんだい玄長げんちょうと申す者じゃ。邪魔立て致すとは何を暴言申さるるか、霊地の庭先荒さば仏罰ぶつばつ覿面てきめんに下り申すぞッ
「なにしてらっしゃるのらいさん、せっかくのおビールの気がぬけてしまってよ」
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
房州ぼうしゅうとかは百ねんらいためしがないとわれるほどの惨害ざんがいこうむったのでした。
「ぢや、一つ紹介ひきあはせをしよう。こつちへ来たまへ、五らい君。」
れにおうを告げて、らいを知る者なりと。——学而篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「先生らい」と学生の一群は篠田を擁してをどり行きぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いのち嬉しき撰集せんじふのさた らい
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
籐椅子とういすにあれば草木花鳥らい
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
らいじゃない」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
孟達の首が洛陽の市にさらされて、その罪状と戦況が知れわたるや、蜀軍らいにおびえていた洛陽の民は、にわかな春の訪れに会ったように
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
扉が明いて中年の婦人が顔を出した、そして「まあらいさん」と云って片手で自分の胸を押えた。来太は右の手でひょいと一種の身振りをし、唇を上へ押し上げるようにしながらにやっと笑った。
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
らい了戒りょうかいとはいうが無銘で、まだ自身には血を試みたことのない一刀のつかを打つと、豹身ひょうしん、くるりッと返って、ふたたび暗黒の口をのぞんでおりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
らい了戒りょうかいの大刀に、衰えた肩をもたせかけ、膝を友禅ゆうぜんの小蒲団にくるんで、相良さがら金吾は昏々こんこんと眠っております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、にわかに気がついた竹童は、数日らい不眠不休ふみんふきゅうの活動に、ともすると眠くなる目をこすりながら、ふたたび、クロに乗って富士の裾野すそのへ舞いもどった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらくは、尊氏の敗戦で脱陣したものでございましょう。さきごろらい、大江山に立ち往生して、進みもせず、もどりもせぬ一陣の兵がいるとは聞いていました。ところがその佐々木道誉、ぬけぬけと、山を
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)