そく)” の例文
何んの小一郎が、そんな武士なものか、「あっ」と叫んだ一刹那、大略おおよそ二間背後の方へ、そくに飛び返っていたのである。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それに、こんな男女郎おとこじょろうの一そくや二束、あえて左膳をわずらわさなくとも、おれ一人で、いや与吉ひとりで片づけてしまう
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「こゝのは貧乏䰗びんぼうくじだよ。大将からは二そくもんのように叱り飛ばされる。他の連中からは余計ものゝように思われる。ツク/″\厭になってしまう」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
だから中野より規模が狭かった大久保小屋の消費高でも、犬に喰わせる一日料の米、三百三十石、味噌十樽、いわし十俵、まき五十六そくという記録がある。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつたい一町歩からそくにしてどの位お収穫とりになりますか、ひとつ承はり度う存じますが。
英語に valueヴァリュー という字がある。近ごろの経済学者はこれを価値かちと訳し、これに lessレッスくわうればあたいなきもの、二そくもんあたいもない、つまらぬものという意になる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
五十そく七十束と苅りあつめてくれて、苅り時をおくらすしんぱいもないのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
関東で大矢を引くというのは、何れも十五そく以上のもの、弓も強力の者が五人、六人かかって張るものでございます。こうした弓で射られた矢は、鎧の二、三枚は軽く射通してしまいます。
東游記とういうきに越前国大野領の山中に化石渓くわせきたにあり。何物にても半月あるひは一ヶ月此たにひたしおけばかならず石に化す、器物きぶつはさらなり紙一そくわらにてむすびたるが石にくわしたるを見たりとしるせり。
箭箆または箭簳やみきともいう竹のつくり方にはいろいろ作法がある、十二そく、あるいは十三束三伏みつぶせなどといって、こぶしひと握りをそくとよんで長さをきめる、そしてみきには節が三つあるのがきまりで
日本婦道記:箭竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
柏餅が一番いんです、布団の両端りょうはじを取って巻付けて両足をそくに立ってむこうの方に枕をえて、これなりにドンと寝ると、い塩梅に枕の処へ参りますが、そのかわり寝像ねぞうが悪いとあんがはみ出します
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
半蔵は、その柿の樹の下を距離の目標にして、裏の的土手まとどてへ向かって弓をかまえ、おそよ二十五そく(一束四本)の矢を放つのが、多年の健康法になっている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、大音に呼び大音に呼び、十二そくぶせ充分に引き、矢筈かくるるばかりとなし、矢声高く切って放した。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
東游記とういうきに越前国大野領の山中に化石渓くわせきたにあり。何物にても半月あるひは一ヶ月此たにひたしおけばかならず石に化す、器物きぶつはさらなり紙一そくわらにてむすびたるが石にくわしたるを見たりとしるせり。
おおいの布を払って披露された品々は、その一端をあげても——お小袖こそで之料二百余反、播州ばんしゅう杉原紙二百そく鞍置物くらおきものぴき明石あかしだい千籠、蛛蛸くもだこ三千連、御太刀幾振
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうこの頃には小一郎は、そくに背後へ飛び返り、ふたたび太刀を下段に付け、「来やアがれーッ!」と構えたが「あッ」とその次の瞬間には、驚きの声を迸らせた。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それらの無数な生命の一個が死ぬまでの価としては、稲何百そくとか、ぜに何貫文なんがんもんとか、都の栄華のなかに住む女性たちが、一匹の白絹を、紅花べにばなで染めるきぬの染代にも足らない値段だった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
造酒は大小をそくに掴むと、韋駄天いだてんのように走って行った。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)