ざん)” の例文
「ご下命のまま、これへの途中、源中納言どのを、ざんに処しましてございまする。いさいは御差遣ごさけんの両使より、おききとりを仰ぎたく」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京兆の尹は、事が余りにあらわになったので、法をげることが出来なくなった。立秋の頃に至って、つい懿宗いそうに上奏して、玄機をざんに処した。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「かりにもお代官のおしるしだなんぞと申し触れるものがあらば、召捕ってざんに処する、これこそ全くお人違いじゃ」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
先日渓間たにまざんに遭った女どもの一人が彼の妻だったとも言う。管敢は匈奴の捕虜の自供した言葉を知っていた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
むかしの苛酷な刑法が十両以上盗んだものは、ざんに処したわけである。もっとも、戦国時代には、一銭りと云って、永楽銭一銭を盗むと斬ってしまったのである。
奉行と人相学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
加多 ……宍戸侯は水戸城において御自害、榊原先生以下数十人はざんに処せらる。死罪、禁鋼百余人。……途中聞きました。一橋公からの御沙汰はまだ来ませんか?
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「なんじの罪はざんに当る」と、天師はおごそかに言い渡した。「しかし知県に化けているあいだにすこぶる善政をおこなっているから、特になんじの死をゆるしてやるぞ」
軍正ぐんせいうていはく、(二一)軍中ぐんちうにはせず。いま使者ししやす、((軍法ニ))なにふ』と。せいいはく、『ざんたうす』と。使者ししやおほいおそる。穰苴じやうしよいはく『きみ使つかひこれころからず』
で、曾一族のことごとくを殺し、また、生け捕った史文恭はこれを山寨にひきあげてからざんに処した。そして一同して首と生肝いきぎもとを亡きちょう総統の祭壇にそなえた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ざんうこと、死をたまうことに対してなら、彼にはもとより平生から覚悟ができている。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
... なん相送あひおくると』と、(一八)軍正ぐんせいしてうていはく、『軍法ぐんはふに、しておくいたものなにふ』と。こたへていはく、『ざんたうす』と。莊賈さうかおそれ、ひとをしてせて景公けいこうはうじ、すくひをはしむ。
「な、なに。もはやざんに処してしまったとか。われとしたことが、軽々しくも、怒りにまかせて、遂に一人の股肱ここうを死にいたらしめてしまった。ああ、悲しいかな」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後日、その約束が無視されて、利に代るに、ざんや毒を以てされ、或いは、自滅にまかされても、天下の嘲笑はむしろ快とするのみで、誰ひとりその末路を憐れむ者すらない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七禁令、五十四ざん、違背あるものは、必ず罰せん。明暁天までに、総勢ことごとく出陣の具をととのえ、江のほとりまで集まれ。所属、手配はその場において下知するであろう
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いと易いこと」と、曹操はすぐ筆をとって、当手の軍勢ども、呉へ入るとも、龐統一家には、乱暴すべからず、違背いはいの者はざんに処す——としるし、大きな丞相印をして与えた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先年——佐渡ヶ島へ流された日野資朝卿すけともきょうも、やがては、ざんに処せられようが、もし折あらば、日野俊基は事ならぬまに、吉田殿の裏切りのため、死後をたのんで、鎌倉にて死せりと
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ざんに処したまま取り捨ててある。首は塩漬けにして保存してあるだろう」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
窮民には穀や物をほどこし、旧高廉こうれんの部下で、悪評の高い二、三を捕えて町中でざんに処し、またとらわれていた柴家さいけ眷族けんぞくや、病人の柴進は、これを車仕立ての内にいたわり乗せて、やがて全軍をそろえ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)