トップ
>
拉
>
らつ
ふりがな文庫
“
拉
(
らつ
)” の例文
其日の夕方、与次郎は三四郎を
拉
(
らつ
)
して、四丁目から電車に乗つて、新橋へ行つて、新橋から又引き返して、日本橋へ来て、そこで
下
(
お
)
りて
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
妻が南兵に
拉
(
らつ
)
し去られるのを目撃しつゝ、自分だけ、のがれてきた男があった。毛布、風呂敷包をかゝえて来る者。サル又と襦袢だけの者。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
個性の緊張は私を
拉
(
らつ
)
して外界に突貫せしめる。外界が個性に向って働きかけない
中
(
うち
)
に、個性が進んで外界に働きかける。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
褐色の池のぴたぴたと
音
(
ね
)
を立てる処、蔦の葉の
山毛欅
(
ぶな
)
の幹にまとわる処、その空寂の裡に彼は能く神々を
拉
(
らつ
)
し
来
(
きた
)
った。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
法律は鉄腕の如く雅之を
拉
(
らつ
)
し去りて、
剰
(
あまつ
)
さへ
杖
(
つゑ
)
に離れ、涙に
蹌
(
よろぼ
)
ふ老母をば道の
傍
(
かたはら
)
に
踢返
(
けかへ
)
して顧ざりけり。
噫
(
ああ
)
、母は
幾許
(
いかばかり
)
この子に思を
繋
(
か
)
けたりけるよ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
彼
(
かれ
)
の
老躯
(
らうく
)
は
日毎
(
ひごと
)
に
空腹
(
くうふく
)
から
來
(
く
)
る
疲勞
(
ひらう
)
を
醫
(
い
)
する
爲
(
ため
)
に
食料
(
しよくれう
)
を
攝取
(
せつしゆ
)
する
僅
(
わづか
)
な
滿足
(
まんぞく
)
が
其
(
そ
)
の
度毎
(
たびごと
)
に
目先
(
めさき
)
の
知
(
し
)
れてる
彼
(
かれ
)
を
拉
(
らつ
)
して
其
(
そ
)
の
行
(
ゆ
)
く
可
(
べ
)
き
處
(
ところ
)
に
導
(
みちび
)
いて
居
(
ゐ
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
余
甫
(
はじ
)
めて冠して、江戸に東遊し、途に阪府を経、
木世粛
(
もくせいしゆく
)
(即ち巽斎である。)を訪はんと欲す。偶々人あり、余を
拉
(
らつ
)
して、
将
(
まさ
)
に天王寺の
浮屠
(
ふと
)
に登らんとす。
僻見
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
だが、一とたび消えてついに二度とは聞かれない声もあった。その声は何処に
拉
(
らつ
)
し去られたのであろうか。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
血と肉に縁のない概念の中へ
拉
(
らつ
)
し去り曖昧化し、科学への御用的役割を務めるのは凡そ意味ない。
新らしき文学
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
けふまでに事柄の
捗
(
はかど
)
つて来たのは、事柄其物が自然に
捗
(
はかど
)
つて来たのだと云つても好い。
己
(
おれ
)
が陰謀を推して進めたのではなくて、陰謀が己を
拉
(
らつ
)
して走つたのだと云つても好い。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
最早前後を顧慮する
遑
(
いとま
)
とてもなく千登世を
拉
(
らつ
)
し去つたのであるが、それは合意の上だと言へば言へこそすれ、ゴリラが女を
引浚
(
ひつさら
)
へるやうな慘虐な、ずゐぶん兇暴なものであつた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
その部分の飛躍がかの女の交感の世界から或る人々を
拉
(
らつ
)
し
来
(
きた
)
って、年齢の差別や階級性を自他共に忘れさせる——或る時期からの逸作は、かの女を妻と思うより娘のように
愛撫
(
あいぶ
)
し
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「あゝ行くよ行くよ。行つて酒でも飲むのだ。」彼は、気の抜けたやうに、呟きながら、芸妓達に引きずられながら、もう何の興味も無くなつた来客達の集まつてゐる方へ
拉
(
らつ
)
せられた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
姑
(
しばら
)
く
推
(
おし
)
問答の末彼は
終
(
つひ
)
に満枝を
拉
(
らつ
)
し去れり。
迹
(
あと
)
に貫一は悪夢の覚めたる如く
連
(
しきり
)
に
太息
(
ためいき
)
呴
(
つ
)
いたりしが、やがて
為
(
せ
)
ん方無げに
枕
(
まくら
)
に就きてよりは、見るべき物もあらぬ
方
(
かた
)
に、
止
(
た
)
だ
果無
(
はてしな
)
く目を奪れゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
わが
舌人
(
ぜつじん
)
たる
任務
(
つとめ
)
は
忽地
(
たちまち
)
に余を
拉
(
らつ
)
し去りて、青雲の上に
堕
(
おと
)
したり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
拉
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“拉”を含む語句
拉致
虎列拉
拉甸
加拉太
虎刺拉
拉典
拉丁
拉薩
海拉爾
取拉
一拉
摩尼拉
日拉達
蘇格拉第
柏拉図
烏拉兒
馬尼拉
阿拉米多
阿百拉
阿拉勿関
...