心元こゝろもと)” の例文
ふで申上參せ候扨々思ひ掛なく九しるし出拔だしぬけに歸國致し途方に暮參せ候豫々夫婦になり度いのり居候へども此の後は寛々ゆる/\御げんもじも心元こゝろもとなくぞんじ參せ候
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いづれ唯事たゞごとならじと思へば何となく心元こゝろもとなく、水汲みていそぎ坊に歸り、一杖一鉢、常の如く都をさして出で行きぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そして、それをまたまことおもはう。でも誓言せいごんなどなされると(かへって)心元こゝろもとない、戀人こひゞと誓言せいごんやぶるのはヂョーヴじんたゞわらうておましなさるといふゆゑ。
鉄平は一人では心元こゝろもとないので、附いて来た岡村に一しよにゐて貰つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いふてはるけれどおまへ親不孝おやふかう子不孝こふかうすこしは行末ゆくすゑをもおもふて眞人間まにんげんになつてくだされ、御酒ごしゆのんらすは一ときしんから改心かいしんしてくださらねば心元こゝろもとなくおもはれますとて女房にようぼううちなげくに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
与次郎はこれをタイムス社が日本で百科全書を売つた方法に比較してゐる。比較丈は立派にきこえたが、三四郎はなんだか心元こゝろもとなく思つた。そこで一応与次郎に注意した時に、与次郎の返事は面白かつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何事も此の老婆ばゞに任せ給へ、又しても心元こゝろもとなげに見え給ふことの恨めしや、今こそ枯技かれえだに雪のみ積れども、鶯鳴かせし昔もありし老婆、よろづ拔目ぬけめのあるべきや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
パリス チッバルトの落命らくめいをいみじうなげいてゞあったゆゑ、なみだ宿やどには戀神ヸーナスまぬものと、縁談えんだん差控さしひかへてゐたところ、あまきつなげいてはひめ心元こゝろもとない、ひとりでゐれば洪水こうずゐのやうになみだ
すべいま宗助そうすけには心元こゝろもとなくえる助言じよごんあたへたすゑ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
下にしきしが今日ものらるゝ約束なれば小袖は其儘そのまゝ我等があづかり置て只今持て參りたりされば一應のはなしなくて出立すべき筈はなしいへば徳右衞門押返おしかへしいや決していつはならじつ昨夜ゆうべ女中よりの咄には明日あす鎌倉の尼寺まで通駕籠とほしかごで參る約束はしたれ共那駕籠屋あのかごやは何とやらん心元こゝろもとなし明朝迎ひに參らば程能ことわくれよと頼まれたりもしいつはりと思は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)