微酔ほろよい)” の例文
旧字:微醉
右側の欄干際に引添った二人のわきへ、すらりと寄ったが、お端折の褄を取りたそうに、左を投げた袖ぐるみ、手をふらふらと微酔ほろよいで。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
低声こごえでこんな唄をうたいながら、お葉は微酔ほろよい機嫌でかどに出た。お葉は東京深川生れの、色のやや蒼白い、細面ほそおもての、眉の長い女であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と常にない文治郎は微酔ほろよい機嫌きげんで、お村の膝へ手をつきますから、お村は胸がどき/\して、平常ふだんからお村は文治郎に惚れて居りましたが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
領主 (微酔ほろよい)使いの者の遅いのは、また嬢が苦情を申して、早速は来ぬのだろうと察した故、我等の方より出て参った。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
頭は月代さかやきが広く、あお向いた頸元くびもとに小さなまげねじれて附いていて、顔は口を開いてにこやかなのは、微酔ほろよい加減で小唄こうたでもうたっているのかと思われました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
私は友達と別れ、独りそれらの昔をしのびながら、微酔ほろよいの快い気持で、ぶら/\と毘沙門附近を歩いていた。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
あの神様の夢見心の微酔ほろよいに、いつでもいるだけの酒は
はじめは二人ともに黙ってちびりちびり飲んでいるらしかったが、そのうちに年上らしい一人の男が微酔ほろよい機嫌で云い出した。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
などと申しまする時分には、小宮山も微酔ほろよい機嫌、向うについておりますのは、目指すお雪ではなくて、初霜とや謂わむ。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えつおさえつ話をしながら酒宴さかもりをして居りましたが、其の内にだん/\と爺さん婆さんも微酔ほろよいになりました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
白鳥はくちょうを提げてね、景気よく飲むんだって……当人すでに微酔ほろよいです。お待遠様と持込んだのが、天麩羅蕎麦てんぷらそばに、桶饂飩おけうどん
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お葉は首をるようにして、はははははと高く笑った。彼女かれは酒の強い方であったが、昨夜以来飲み明かした地酒のよい漸次しだいに発したと見えて、今は微酔ほろよいどころでない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
微酔ほろよい機嫌で赤い顔をして友之助の店先へ立ち
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……チャンチキ、チャンチキ、ヒューラとはやして、がったり、がくり、列も、もう乱れがちで、昼の編笠をてこ舞に早がわりの芸妓げいしゃだちも、微酔ほろよいのいい機嫌。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
離れる男ッてのがお前さん江戸にありますか。人目にそうは見えないでも、花のような微酔ほろよいで、ここに一本ひともと咲いたのは、稲葉家のお孝ですよ。清葉さんとは違いますわ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
微酔ほろよいめてあおくなれば、下男は何事やらんとおもてを望み、泰助を見るとひとしくり返りて
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
特に観世音の御堂みどうでは、このおんなと、花片はなびらさっ微酔ほろよいの頬に当るように、うすかおりさえして、近々と、膝を突合わせたような事がありましたから、色の刺激で、欄干近い、枝もこずえ
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、気疾きばやくびからさきへ突込つっこむ目に、何と、ねやの枕に小ざかもり、媚薬びやく髣髴ほうふつとさせた道具が並んで、生白なまじろけた雪次郎が、しまの広袖どてらで、微酔ほろよいで、夜具にもたれていたろうではないか。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
微酔ほろよいのいい機嫌……機嫌のいいのは、まだ一つ、上等の巻莨まきたばこに火を点けた、勿論自費購求の品ではない、大連に居る友達が土産にくれたのが、素敵な薫りで一人その香を聞くのがおし
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……微酔ほろよいもそのままで、ふらふらと花をみまわしつつ近づいた。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
微酔ほろよいの目元を花やかに莞爾にっこりすると
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
微酔ほろよいの目元をはなやかに莞爾にっこりすると
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
藤助は真顔で、微酔ほろよいかぶりった。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも微酔ほろよいと来ていましょう。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
微酔ほろよいのいい機嫌で
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうもっと微酔ほろよい機嫌で
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)