御神輿おみこし)” の例文
もうその時分われ/\は骨の髄まで茶屋酒に入り浸つて、体も心もだらけ切つてゐたので、とても御神輿おみこしを上げる気力がなかつた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし生酔本性違わずで、雷見舞の役目のことが胸にありますから、大次郎もあまり落ちついて御神輿おみこしを据えているわけには行きません。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「追分の梅吉親分におびき出されて、淺嘉町の小娘殺しを調べて來ましたが、あつしぢやどうにも手に了へねえ、ちよいと御神輿おみこしをあげて下さいよ親分」
地震なゐつてうごき、まち此方こちらかたむいたやうに、わツとおここゑひとしく、御神輿おみこし大波おほなみつて、どどどとつてかへして、づしんと其處そこ縁臺えんだいすわつた。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一つ御免蒙って御神輿おみこしおろしてみよう。そうして銀のケースの中から葉巻ハヴァナを一本頂戴してみる事にしてみよう。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
明日は牛頭天王の祭りとて、大通りには山車小屋をしつらい、御神輿おみこしの御仮屋をもしつらいたり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
御所車の様な車輪がついて青黒く不気味に光った鋼鉄製で、それをいかだにのせて、造花で飾って、御神輿おみこしのお渡りみたいに川をさかのぼり、楽園の中心の広っぱへと運んだものだ。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これを主人うちが着るんですよ。主人ばかりぢやない、町の戸主はみんな! それこそ、代人はできないんださうですよ。そして、御神輿おみこしの後について町中を行列して歩くんださうですよ。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
上地の様子を知らない私が、突然お祭礼の御神輿おみこしを館舎にかつぎ込まれて、どうしたらいいかと狼狽うろたえているのを見て、彼女は私を後から押し出すようにしてヴェランダへ突き出したんです。
機密の魅惑 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
桜の花と呼ばれた娘義太夫の竹本綾之助たけもとあやのすけや、藤の花の越子こしこや、桃の花の小土佐こどさが乗っている人力車の、車輪や泥除どろよけに取りついたり、後押あとおしをしたりして、懸持かけもちの席亭せきから席亭へと、御神輿おみこしのように
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
おかん 兄弟が相棒で御神輿おみこしでもかつぎに出るのかえ。(土間を見返りてあざ笑ふ。)肝腎かんじんのかつぐ物があるかよ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
もう此時このときは、ひと御神輿おみこしかつぐのでない。龍頭りうとうまた鷁首げきしゆにして、碧丹へきたん藍紅らんこういろどれる樓船やかたぶねなす御神輿おみこしはうが、いますれいとともに、ひとなみおもふまゝるのである。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「だから変じゃありませんか、ね親分、ちょいと御神輿おみこしをあげて——」
日中につちうあつさに、さけびたり、える。御神輿おみこしかつぎは、ひと氣競きほひがものすごい。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その荷物のまわりには手代りの人足が大勢付き添って、一番先に『御松茸御用』という木の札を押し立てて、わっしょいわっしょいと駈けて来る。まるで御神輿おみこしでも通るようでした。はははははは。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
氏神の祭礼に、東京で各町内、侠勇きおい御神輿おみこしかつぐとおなじように、金沢は、ひさしを越すほどのほろに、笛太鼓三味線さみせん囃子はやしを入れて、獅子を大練りに練って出ます。その獅子頭に、古来いわれが多い。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)