後日ごにち)” の例文
殊にこうした刑事問題に対しては後日ごにちの面倒を恐れて何事もはっきりとは云い切らない傾きがあるので、半七も要領を得ずに引き取った。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
九郎兵衞是は後日ごにち詮議せんぎの時首さへ無れば知れまじとて九助取隱とりかくせしなりと云ば大岡殿シテ又首のなき者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし打たれて死ぬまでも此の槍にてしたゝかに足を突くか手を突いて、亀手てんぼう跛足びっこにでもして置かば、後日ごにち孝助が敵討かたきうちる時幾分かの助けになる事もあるだろうから
ぐとおつしやれば是非ぜひなけれど、下手へた出來できなばかへりて姉樣ねえさまわらはれ、若樣わかさままけものなり、うなされ、はゆるゆると後日ごにちことになし、吾助ごすけよりもうた名人めいじんにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この学校の向うに、後日ごにちあたしが生花いけばなを習いにいった娘の家で、針医さんがあった。
得意であったが、お酌が柳橋のでなくっては、と云う機掛きっかけから、エルテルは後日ごにちにして、まあ、題も(ハヤセ)と云うのを是非聞かして下さい、酒井さんの御意見で、お別れなすった事は
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後日ごにちいたって私のいった通りになったのが面白い。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もう一つには後日ごにちの詮議を逃がれるために、亭主を殺した上で自分も身投げをしたように見せかける。これは花鳥が考え出したのだそうです
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
殺した時其方そつち利根川とねがはへ死骸を打込うちこまふといつたら三五郎が言には川へ流しては後日ごにち面倒めんだうだ幸ひ此彌十に頼んで火葬くわさうもらへば死骸しがいも殘さず三人の影もかたちも無なるゆゑ金兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
又作は近辺あたりを見返ると、往来はぱったり止まって居りますから、何かの事を知った此の車夫しゃふけて置いては後日ごにちさまたげと、車夫のすきまうかゞい、腰のあたりをポオーンと突く、突かれて嘉十はもんどり切り
かれは百両の金と引き換えに弟の死骸をひき取ることについて何の苦情はないという、後日ごにちのために一札を書かされた。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
其方懷姙くわいにんのよし我等血筋ちすぢ相違さうゐ是なしもし男子なんし出生に於ては時節じせつを以て呼出よびいだすべし女子たらば其方の勝手かつてに致すべし後日ごにち證據しようこの爲我等身にそへ大切に致候短刀たんたう相添あひそへつかはし置者也依而よつて如件くだんのごとし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もう一つには万一自分が隠密であるということが発覚した暁に、江戸の侍はこんなまずい絵を描き残したと後日ごにちの笑いぐさにされるのが残念である。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
後日ごにちのために、次右衛門から今後異論がないという一札いっさつを入れさせて、町役人も立ち会いの上で引き渡しを済ませた。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どうで自分の物にならない女ならば、いっそここであわせて玉藻を殺して、後日ごにちの口をふさぐ方が利益であると、彼は咄嗟のあいだに思案を決めた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「勿論このまま打っちゃっても置かれめえが、火葬にするのはお見合わせなさい。この死骸について、後日ごにち又どんなお調べがないとも限りませんから」
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
八橋と自分との仲をうすうす覚った彼は、八橋を請け出すについて後日ごにちの苦情のないように縁切りの掛け合いに来たのであろうと、栄之丞は推量した。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また後日ごにちにねだりがましい事など云いかけられても面倒である。すこしうしろ暗いやり方ではあるが、いっそ不意に引っさらってくる方が無事であろう。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
骨折り賃を貰うばかりでなく、半七らの用を勤めて置けば、後日ごにちに何かの便利がある。千次はこれを御縁に、何分お引き立てを願いますなどと云っていた。
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
後日ごにちになって考えると、彼自身にもその時の心持はよく判らないとの事であったが、勘次郎は唯なんとなく懐かしいように思って、その兜を拾いあげたのである。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
泥坊にしろ、博奕打ちにしろ、相手が大勢で袋叩きにでもされるか、あるい後日ごにちの難儀を恐れて、その口をふさぐために息の根を止められるようなことが無いとも限らない。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし最初に生えた蕈は、その毒があまりに猛烈で、食えばすぐに死んでしまうので、後日ごにちの面倒を恐れて用いず、多くは二度目に生えたのを用いて、徐々にたおれさせるのであった。
「傷養生をして後日ごにちの御沙汰を待っていろ。かならず短気を出しちゃあならねえぞ。金兵衛の仇はまだほかにも大勢ある。それは俺がみんな仇討ちをしてやるから、おとなしく待っていろ」
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
後日ごにち譴責けんせきをうけるようなことがあっても困るので、少し手にあまるような事件には自分の意見書を添えて『何々の仕置可申付哉、御伺』といって、江戸の方までわざわざ問い合わせて来る。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それでも後日ごにちの悪口の種をかないように、兄夫婦は前からかなり神経を痛めていろいろの手配をして置いただけに、万事がとどこおりなく進行して、お客様いずれも満足であるらしかった。
こま犬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それにして、変な小細工をするなら、おれはもう手を引くからそう思ってくれ。後日ごにちに何事が起っても、主人の首に縄が付いても、ここの店が引っくり返っても、決しておれを恨みなさんなよ。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
忠一は元気のい男で、酔って随分騒いだ。市郎も温順おとなしくしては居なかった。けれども、二人ながらただ酔って騒いで帰っただけのことで、別に後日ごにちの面倒を惹起ひきおこすような種はかなかったのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
後日ごにちの証拠になるのを恐れたのだろう。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)