度胸どきょう)” の例文
竹童ちくどうみたいな小僧こぞうにはりまくられ、旅僧たびそうににらまれればすぐげだすなんて、いくら町人ちょうにんにしても、あまり度胸どきょうがなさすぎるね」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「東京へ逃げるなら逃げる、西へ落ちるなら落ちるように早くお決め下さらんとわれわれふたり、度胸どきょうわらんですよ」
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
小ツルなどからあからさまなことをいわれても、じろりと冷たい目でにらみかえす度胸どきょうは、だれにもまねのできないものだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
あきれたね。いい度胸どきょうさ、十八なんだよ。大下組の若いのと一緒になったんだけれど、何時いつの間にか、あんな凄い刺青を
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
小説を作る度胸どきょうは、このときに出来たといっても過言かごんではない。なおそのうえ僕を楽しませたものは、そこに書かれてあった数行の作品批評であった。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
明くる日になると、品子は縛ることを止めにして、逃げられたら逃げられたで仕方がないと、度胸どきょうをきめた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これは恐るべき度胸どきょうだと、感嘆したことを今でもおぼえているが、二十年をた今となると私自身が、まったく、それと同じ境地きょうちに落ちつこうとしているのだ。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
度胸どきょうなんです。私は、やっとその勇気を、あなたによってあたえられたのだ、そう私はいってあげたんです
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
トニイは度胸どきょうをきめました。目がさめたばかりのようなふうをして、起きあがってのびをしました。
街の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
とすっかり度胸どきょうをきめて、こしにきこりのおのをさして、烏帽子えぼしをずるずるにはなあたままでかぶったまま
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
度胸どきょうはねえし、びくびくしながら手伝ったところで、あんまり役にもたたねえでしょう
その当時、新橋駅付近に、千成せんなりと名乗る嵯峨野さがのの料理職人が、度胸どきょうよく寿司屋稼業を始め、大衆を相手にして、いつの間にか職人十数人を威勢よくあごで使って、三流寿司を握り出した。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
度胸どきょうさだめに、それ、あっちから旅人が来る、あいつをひとつやっつけてみろ」
ただのかわものなら、おいらもこうまじゃおどろかねえが、一晩中ばんじゅうずにつめたり、たばにしてあるおんなかみを、一ぽんぽんしゃぶったりするのをちゃァいくらおいらが度胸どきょうえたって。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「へええ、ひどくまた度胸どきょういな。」
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と思って度胸どきょうをすえた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
力をこめて手応てごたえをためし、よしと思うとその男のかげ、度胸どきょうよく乗ってきた小舟をながし、スルスルと一本づなへよじのぼりだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういうときに婦人は度胸どきょうのある者、ベラントがノック・アウトされたと見て、前にとびだして博士の腕を抑える。
明くる日になると、品子は縛ることを止めにして、逃げられたら逃げられたで仕方がないと、度胸どきょうをきめた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
度胸どきょうがいいので準幹部級の小頭こがしらとなって居た勇もまた、その例に漏れなかった。中には正業にくことの出来た聡明な者もあったが、大部分は路頭に迷う境涯に抛り出された。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
土方歳三もかねて島田のうわさは聞いていたが、これほどの人とは思わなかった。しかしこうなっても、持って生れた気象きしょうは屈することなく、かさず斬り込んで来た度胸どきょうには島田虎之助も感心しました。
巽小文治たつみこぶんじは、もとより果心居士かしんこじの門下でないから、浮体ふたいの息を知らない。したがってただ度胸どきょうのはやわざ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なに、おどろくものか、と度胸どきょうをすえて、窓から下を見おろした。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……だが、思えば私という女も、すごい腕になりました。これもみんな、お前や、啓之助が私に度胸どきょうをつけてくれたお仕込しこみだよ。阿波へ帰ったら、あの男に、くれぐれよろしくいっておくれネ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)